ESRI Discussion Paper Series No.89
保育サービス市場の実証研究6
「保育サービスの利用は女性労働供給をどの程度刺激するか?
-ミクロデータによる検証-」

2004年3月
  • 清水 谷諭(内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
  • 野口 晴子(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、東洋英和女学院大学助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

急速な高齢化と少子化の進展の中で、女性労働力の有効な活用は、将来にわたって日本経済の活力を維持する上で不可欠である。そのための1つの政策手段として議論されるのが、保育サービスの充実である。しかし、保育サービスの充実が女性労働供給に与える影響については、日本では十分な実証分析の蓄積がなされているとは言いがたい。

本論文は、内閣府が独自に収集した未就学児童を抱える世帯(首都圏都心部を対象)のミクロデータを用いて、保育サービスの利用が母親の労働供給に与える影響を定量的に検証する。

2.手法

本論文では、2002年7-9月に内閣府が独自に実施した「適正な保育費用単価とサービス内容に関するアンケート調査」)のミクロデータを用いる。対象は首都圏の未就学児童を抱える世帯である。

保育サービスの利用が女性の労働供給に与える影響を評価するためには、両者の間の内生性を考慮する必要がある。まず、バイヴァリエット・プロビット法及び2段階Tobit推定法を用いて、保育サービスを利用する確率と保育サービスへの支出の決定要因を検証する。さらに、それを踏まえて、母親の労働供給に対する賃金率及び保育サービスへの支出負担の影響を検証する。

3.分析結果の主要なポイント

  • (1)親の保育負担料に対する労働供給の弾力性(親の保育負担料が1%の上昇した場合の就労確率の変化)は約-0.2であると推定される。
  • (2)母親の賃金率に対する労働供給の弾力性は高く、1.4前後で統計的にも有意である。さらに、育児休業制度、フレックスタイム制度、勤務時間短縮制度、企業内託児所などの勤務先での福利厚生制度充実が母親の就労確率に有意にプラスに働く。

4.今後の課題

以上の結果は、賃金率が高く、生産性のより高い女性ほど労働供給が刺激されることを示しており、保育サービスの利用可能性の拡大がこうした女性の労働供給を促進する可能性を明確に示している。さらに、女性の労働供給を刺激する上で、保育サービスに対する支出負担のあり方や育児をサポートするための勤務先での福利厚生制度の整備が重要であることが明らかになった。従って、女性労働供給を促進するためには、保育サービスの供給の充実だけでなく、保育サービスの価格政策のあり方や勤務先での福利厚生制度の充実などの環境整備が重要なファクターとなろう。

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  2. 3ページ
    1.はじめに
  3. 4ページ
    2.先行研究
  4. 8ページ
    3.データ
  5. 13ページ
    4.母親の労働供給関数のための理論的モデルと推定方法
  6. 18ページ
    5.推定結果
    1. 18ページ
      5-1.保育サービスを利用する確率の決定要因
    2. 20ページ
      5-2.保育サービスへの支出負担の決定要因
    3. 22ページ
      5-3.母親の労働供給に対する賃金率及び保育サービスへの支出負担の影響
  7. 24ページ
    6.結論とインプリケーション
  8. 25ページ
    (参考文献)
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