ESRI Discussion Paper Series No.92
SNA家計再評価勘定の分布統計
- 国民経済計算ベースの再評価損益の分布 -

2004年4月
  • 浜田 浩児(内閣府経済社会総合研究所情報研究交流部長)

要旨

I.趣旨

国民経済計算の国際基準である93SNAは、家計勘定について所得規模等による内訳部門分割を提示している。SNAは、所得・資産等について、客観的かつマクロ統計と整合的な概念を提供するものであり、所得、資産・負債、再評価損益等を家計勘定の中に体系的に位置付け、結びつけて分析できる。このため、全世帯計が国民経済計算(SNA)の家計勘定に見合う分布統計(家計の内訳部門別の統計)を作成することは、重要な課題である。しかし、SNAベースで家計再評価勘定の分布統計を推計した研究はない。

そこで、本稿では、全世帯計がSNAの家計再評価勘定に見合う分布統計の作成を行うとともに、SNAベースで所得・資産格差に対する再評価損益の寄与等を分析した。

II.分析手法

家計再評価勘定の分布統計の推計は、総務省「全国消費実態調査」の個票の概念的に対応する項目を当てはめ、他の統計や国民経済計算(SNA)の計数も利用して、1994年、1999年について行った。この分布統計に基づき、分布尺度を用いて所得・資産格差を構成要素により分解することを通して、SNAベースで所得・資産格差に対する再評価損益の寄与等を分析した。

III.分析結果の主要なポイント

  1. 1999年の所得・資産格差に対する正味資産再評価損益の寄与度は、1994年より上昇し、格差を拡大する方向に働いた。これは、1999年のほうが株価上昇幅が大きかったことから、株式を中心に金融資産の再評価益の寄与度が高まったためである。
  2. 水準をみると、非金融資産は地価下落から再評価損でマイナスの寄与度、金融資産は株価上昇から再評価益でプラスの寄与度となっている。両者を比べると、所得格差については、金融資産のほうが、分布尺度(格差)の大きいことを反映して寄与度の絶対値が大きいため、正味資産の再評価損益の寄与度はプラスになっている。一方、資産格差については、1999年は所得格差と同様であるが、1994年では、非金融資産のほうが、分布尺度の大きいことを反映して寄与度の絶対値が大きいため、正味資産の再評価損益の寄与度はマイナスになっている。

IV.結び

全世帯計がSNAに見合う家計再評価勘定の分布統計を推計し、1999年の所得・資産格差に対する正味資産再評価損益の寄与度は1994年より上昇して格差を拡大する方向に働いた等の分析結果が得られた。

ただし、家計再評価勘定の分布統計は、有形非生産資産(土地)と金融資産・負債についてSNAをコントロール・トータルとして推計(全世帯計でSNAに合うように各世帯の計数を比例的に拡大)しており、今後の統計整備の動向も踏まえて推計方法の検討・改善が課題である。

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全文の構成

  1. (要旨)
  2. 1ページ
    はじめに
  3. 1ページ
    I 分布統計の推計範囲・推計方法
    1. 2ページ
      1.非金融資産
      1. 2ページ
        (1)生産資産
      2. 2ページ
        (2)有形非生産資産
    2. 3ページ
      2.金融資産
      1. 3ページ
        (1)預金
      2. 3ページ
        (2)株式以外の証券
      3. 4ページ
        (3)株式
      4. 4ページ
        (4)保険・年金準備金
  4. 4ページ
    3.負債
  5. 4ページ
    4.正味資産
  6. 4ページ
    II 分布統計の推計結果
    1. 4ページ
      1.分布統計集計値のSNAとの比較
    2. 5ページ
      2.世帯属性別分布統計
      1. 5ページ
        (1)第1次所得10分位階層別
      2. 6ページ
        (2)正味資産10分位階層別
      3. 6ページ
        (3)その他の世帯属性別
  7. 7ページ
    III 所得・資産格差に対する再評価損益の寄与
    1. 7ページ
      1.所得格差に対する再評価損益の寄与
    2. 8ページ
      2.資産格差に対する再評価損益の寄与
    3. 9ページ
      3.世帯単位との比較
  8. 10ページ
    結論と課題
  9. 11ページ
  10. 28ページ
    (参考文献)
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