ESRI Discussion Paper Series No.96
高齢化、政策変更と内生的成長
- 一般均衡型世代重複モデルによる数値試算 -

2004年4月
  • 島澤 諭(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、秋田経済法科大学専任講師)

要旨

1.問題意識

現在、日本を含む先進各国で高齢化が進行している。高齢化の影響に関する定量的な評価については、これまでAuerback and Kotlikoff型の一般均衡型世代重複シミュレーションモデルを用いた先行研究がわが国を含め多数なされている。しかしながら、そうしたシミュレーションモデルの多くは、新古典派成長モデルをベースとしているため、人口と技術進歩の間に存在するであろう相互依存関係を無視しており、十分とは言えない。

そこで本論文では、人的資本蓄積を内生化した一般均衡型世代重複シミュレーションを開発し、技術進歩を内生化することで、高齢化がマクロ経済にもたらす潜在的なインパクトを把握するとともに、財政再建・公的年金制度改革といった政策の効果についても定量的な分析を行う。

2.分析手法

本論文では、まず、人的資本投資を導入した宇澤・Lucas流の内生的成長モデルをベースとした一般均衡型世代重複シミュレーションを構築する。次いで、最新時点のデータを用いてカリブレーションを行い、ベンチマークシミュレーションを行う。その後、公的年金制度改革、財政再建といった政策変更シナリオ分析を行い、政策変更の効果を見る。このとき、従来の新古典派成長モデルをベースとしたモデルによるシミュレーションも行うことで、両モデルの結果の違いをあわせて検討する。

3.分析結果の主要なポイント

ベンチマークシミュレーションからは、高齢化は、(1)貯蓄率を引き下げるものの、労働力をそれ以上に減少させるため、賃金率の上昇、資本収益率の低下を惹起する、(2)税引き後のネットの賃金率の上昇は、人的資本投資を増加させる、(3)人的資本ストックの増加により、高齢化にともなう労働力増加率、資本増加率の低下は相殺されるため、マクロの経済成長率もプラスであり続けること、が明らかなになった。次に、政策変更シナリオ分析からは、公的年金制度改革、財政再建ともに、将来純所得の割引現在価値を増加させるため、人的資本投資を増加させ、経済成長率を長期的に上昇させること、が明らかになる。また、外生的技術進歩モデルでは政策変更は長期的なインパクトを有しないことが確認された。

4.まとめ

以上のシミュレーション分析から、

  • (1) 人的資本投資は持続的な経済成長に不可欠な要素であること、
  • (2) 賦課方式的な公的年金制度改革、財政再建は、人的資本蓄積を刺激することで経済成長率を高める効果を持つこと、
  • (3) 新古典派型経済成長モデルに基づくシミュレーション分析は、政策変更の効果を過小評価している可能性が高いこと、

が明らかにされた。

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全文の構成

  1. 2ページ
    (Abstract)
  2. 3ページ
    1. Introduction
  3. 4ページ
    2. Population Projection and Public Pension Program in Japan
  4. 6ページ
    3. The Model Structure
    1. 6ページ
      3.1. Household Sector
    2. 8ページ
      3.2. Human Capital Sector
    3. 8ページ
      3.3. Firm Sector
    4. 9ページ
      3.4. Government Sector
    5. 9ページ
      3.5. Public Pension Secto
    6. 10ページ
      3.6. Equilibrium Condition
  5. 10ページ
    4. Simulation Results
    1. 11ページ
      4.1. Calibrating the Model
    2. 11ページ
      4.2. Simulation Analysis
    3. 12ページ
      4.3. Simulation Results
    4. 13ページ
      4.4. Policy Change Scenarios
    5. 14ページ
      4.5. Sensitivity Tests
  6. 15ページ
    5. Conclusion
  7. 16ページ
    References
  8. 18ページ
    Table & Figure
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