ESRI Discussion Paper Series No.97
高齢化、政策変更と国際資本移動
-2カ国一般均衡型世代重複モデルによる数値試算-

2004年4月
  • 貞広 彰(早稲田大学政治経済学部教授)
  • 島澤 諭(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、秋田経済法科大学専任講師)

要旨

1.問題意識

今世紀を通じて世界の多くの国で高齢化の進展が見込まれている。高齢化の進展は世界共通の現象であるが、高齢化の進展のスピード、局面については、多くの国では一致していない。

高齢化は、ライフサイクル仮説にしたがえば、貯蓄率を低下させることとなる。貯蓄率の低下は、他の条件が一定であるならば、国際資本移動を減少させる方向に働くこととなる。実際、Higgins(1998)は、100カ国のパネルデータを用いた実証分析によって、人口構造の高齢化と国際資本移動に間にネガティブな関係が存在することを見出している。

本稿では、国際的に高齢化が進展するものの、各国間で高齢化の進展スピード・局面に差異がある場合、国際資本移動がいかなる影響を被ることになるのか、高齢化と国際資本移動を、家計の最適化行動に基づき、一般均衡分析の枠組みで取り扱うことが可能な2カ国一般均衡世代重複シミュレーションモデルを用いることで分析を行う。さらに、国際的な潮流となっている財政再建、年金制度改革といった政策変更が国際資本移動に与える影響についてもあわせて分析を行う。

2.分析手法

まず、仮想的な人口データセットの下でシミュレーション分析を行うことにより、高齢化の局面の差異が国際資本移動に与える影響を、より明瞭な形で取り出してみる。次に、年金改革・財政再建が国際資本移動に与える影響について分析を行う。 次に、国際資本移動の役割を確認するため、国際資本移動が全く認められないケースについても分析を行う。

3.分析結果の主要なポイント

高齢化の進展により貯蓄率は低下することが分かる。さらに、高齢化国から非高齢化国へ資本が流出し、高齢化国は国際資本移動が存在する場合にはそうでない場合較べて、資本収益率を上昇させる。また、効用水準は、国際資本移動が存在する場合の方が高くなることが分かる。高齢化国は、長期的には正の対外資産を保有することとなる。

また、政策変更シミュレーションからは、年金制度改革、財政再建とも将来世代の負担を軽減し、将来世代の利用可能な資源を増加させることで、将来世代の効用水準を増加させることが分かる。さらに、他国が政策変更を行うものの自国ではそうした政策変更が行われなかった場合には、自国の厚生が低下することが分かる。

4.まとめ

以上のシミュレーション結果から、

  • (1)自国が高齢化するとしても、非高齢化国が存在し、資本の運用先として利用できるのあれば、自国の厚生水準を高め得ること、
  • (2)賦課方式的な公的年金制度の縮小、財政再建といった現在から将来へ資源を移しかえる政策変更は、他国の実施にかかわらず自国において行う方が、より望ましいこと、

が明らかになった。

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全文の構成

  1. 3ページ
    (Abstract)
  2. 4ページ
    1. Introduction
  3. 6ページ
    2. The Model Structure and Parameterization of the Model
    1. 6ページ
      2.1. The Model
    2. 10ページ
      2.2. Parameterization
  4. 11ページ
    3. Simulation Analysis
    1. 11ページ
      (1) Baseline Simulation
    2. 12ページ
      (2) Alternative Scenarios
    3. 13ページ
      (3) Public Pension Reform
    4. 13ページ
      (4) Fiscal Consolidation
  5. 14ページ
    4. Conclusion
  6. 14ページ
    References
  7. 17ページ
    Table & Figure
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