ESRI Discussion Paper Series No.98
保育サービス市場の実証研究7
「沖縄県における保育サービスの質及び供給効率性の経営主体別比較:
ミクロデータによる検証」

2004年4月
  • 清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授、前内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
  • 野口 晴子(東洋英和女学院大学助教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)

要旨

1.趣旨、問題設定

沖縄県は、大都市部以外でありながら待機児童問題が極めて深刻であり、認可保育所の供給不足が著しい。さらに、半数以上の利用者が認可外保育所を利用している、出生率・離婚率が極めて高いといった点において、本土にない非常に特徴のある市場であり、日本全国が近い将来直面するような課題をすでに含んでいる。従って、沖縄県の保育サービス市場で得られた実証分析の結果は、沖縄県だけでなく日本全国に対しても非常に大きな政策的インプリケーションをもたらすことになる。

しかしながら、これまで、沖縄の保育サービス市場を、ミクロデータを用いて検証した研究は皆無といってよい。

本論文は、沖縄県における豊富な保育所レベルのミクロデータを用いて、保育サービスの質の定量的評価を試みるとともに、それを明示的に踏まえた上で、経営主体別の経営効率性の格差を検証する。

2.手法

本論文では、2003年夏に収集した沖縄県の保育所レベルの豊富なミクロデータをもとに、経営主体別に保育サービスの質の定量的評価と費用関数の推計を試みる。

まず、保育サービスの質の評価については、唯一絶対的な基準は存在しない。そのため、本論文では、1)40項目にのぼるさまざまなサービスの質の評価項目を積み上げる「点数比較アプローチ」、2)サンプルセレクションバイアスを調整した上で、労働者の特性に着目し比較する「労働者の質アプローチ」の2つの方法を試みる。

さらに、保育サービスの質の評価を明示的に取り込んだ形で、産出量を調整し、質を調整した費用関数(quality-adjusted cost function)を推計し、経営主体別の効率性比較を行う。

3.分析結果の主なポイント

実証分析の結果、以下の点が明らかになった。

  • (1)まず「点数評価アプローチ」でサービスの質を比較したところ、それぞれの経営主体が、それぞれ特定の分野でより高い質のサービスを提供していることがわかった。但し、全体としてみれば、労働や資本の投入を示す「構造指標」で、公立認可保育所が最も優れているものの、「発達心理学的指標」「父母の利便性」「その他のサービス」のカテゴリーでは、いずれも、私立認可保育所、公立認可保育所、認可外保育所の順で、サービスの質が優れていることがわかった。さらに「労働者の質アプローチ」で評価すると、私立認可保育所は労働者の面でも公立保育所を上回っていることがわかった。
  • (2)次に、このサービスの質指標を踏まえて、質を調整した費用関数(quality-adjusted cost function)を推計すると、公立保育所は認可外保育所に比べて明らかに効率的でないものの、私立認可保育所と認可保育所の間には効率性の点において統計的に有意な違いはない。

4.おわりに

沖縄県では、認可保育所と認可外保育所では市場が分断されており、異なる保育サービスが提供されていると考えてよい。より高いサービスを求める需要者はより高い保育料を支払って認可保育所を利用しようとするのに対し、保育料が安く小回りのきくサービスを求める需要者は認可外保育所を利用している可能性が高い。

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沖縄県における保育サービスの質及び供給効率性の経営主体別比較:ミクロデータによる検証別ウィンドウで開きます。(PDF形式 162 KB)

全文の構成

  1. 2ページ
    要旨
  2. 3ページ
    1.はじめに
  3. 5ページ
    2.経営主体別の賃金プロファイルの違いと非営利賃金プレミアム
  4. 8ページ
    3.データ
  5. 9ページ
    4.経営主体別の賃金プロファイルの推計方法と推計結果
  6. 11ページ
    5.経営主体別・雇用形態別の賃金プロファイルと賃金格差の要因分解
  7. 13ページ
    6.保育サービス市場における非営利賃金プレミアムの推計と要因分解
  8. 17ページ
    7.結論とインプリケーション
  9. 19ページ
    (参考文献)
  10. 図表
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