ESRI Discussion Paper Series No.99
保育サービス市場の実証研究8
「沖縄県における保育士賃金の決定要因:
経営主体別の賃金プロファイルと非営利賃金プレミアムのミクロデータによる検証」

2004年4月
  • 清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授、前内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
  • 野口 晴子(東洋英和女学院大学助教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)

要旨

1.趣旨、問題設定

沖縄県は、大都市部以外でありながら待機児童問題が極めて深刻であり、認可保育所の供給不足が著しい。さらに、半数以上の利用者が認可外保育所を利用している、出生率・離婚率が極めて高いといった点において、本土にない非常に特徴のある市場であり、日本全国が近い将来直面するような課題をすでに含んでいる。従って、沖縄県の保育サービス市場で得られた実証分析の結果は、沖縄県だけでなく日本全国に対しても非常に大きな政策的インプリケーションをもたらすことになる。

しかしながら、これまで、沖縄の保育サービス市場を、ミクロデータを用いて検証した研究は皆無といってよい。

本論文は、沖縄県における保育士の非常の豊富なミクロデータを用いて、保育サービス供給構造解明の基本となる保育士の賃金決定要因を経営主体別に検証する。

2.手法

本論文では、2003年夏に収集した沖縄県の約7,400名の保育士の詳細なデータをもとに、これまで明らかにされてこなかった保育士の賃金決定要因を検証した。

特に焦点を当てたのは、次の2つの点である。

  • (1)一般職の公務員と同じ俸給表に基づいて決定されている公立保育所と比較して、私立認可保育所の賃金プロファイルがどのような形状をし、それがどのように説明されるのか。これによって、認可保育所の効率化への手がかりを得ることができる。
  • (2)私立認可保育所と認可外保育所を比較して、保育サービス市場におけて非営利賃金プレミアムが存在するか、存在するとすればどの程度か。これによって、認可外保育所を始めとする営利主体の新規参入への手がかりを得ることができる。

3.分析結果の主なポイント

消費税により勤労世代のみならず引退世代に対しても広く年金負担を求める制度改革は、引退世代や現行の年金制度下においてある程度年金負担を行っている世代の効用水準を低下させはするものの、経済を活性化させ、将来世代の効用水準を増加させる、との結論が得られた。

4.おわりに

賃金プロファイルをみると、公立と私立認可保育所の常勤保育士の間でかなりの勾配の差がみられた。しかし、常勤保育士と非常勤保育士の間では職務内容に大きな違いはないことから、公立保育所の常勤保育士の賃金プロファイルだけが急勾配であることを説明するのは難しい。

私立認可保育所と認可外保育所の間の賃金格差についても、人的資本に結びついた要素よりも、むしろ経営方針の違いによって説明される。

つまり、保育士の賃金決定要因としては、人的資本によって決定される部分は大きくない。これは、賃金構造が、労働集約的である保育サービスの質と必ずしも結びついていないことを示唆する。今後の課題として、保育サービスの質が経営主体別にどの程度異なるのか、賃金を含めたすべてのコストについて、サービスの質の違いを考慮した上で、どの経営主体が効率的なのかについて、検証を深めていく必要があろう。

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沖縄県における保育士賃金の決定要因:経営主体別の賃金プロファイルと非営利賃金プレミアムのミクロデータによる検証別ウィンドウで開きます。(PDF形式 172 KB)

全文の構成

  1. 2ページ
    要旨
  2. 3ページ
    1.はじめに
  3. 5ページ
    2.先行研究
  4. 7ページ
    3.データ
  5. 8ページ
    4.「点数評価アプローチ」によるサービスの質の評価
  6. 11ページ
    5.「労働者の質アプローチ」によるサービスの質の評価
  7. 14ページ
    6.サービスの質を考慮したコスト関数の推計
  8. 17ページ
    7.結論
  9. 19ページ
    (参考文献)
  10. 図表
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