ESRI Discussion Paper Series No.100
若年就業対策としての「14歳の就業体験」支援

2004年4月
  • 玄田 有史(内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官、東京大学社会科学研究所助教授)
  • 岡田 大作(内閣府経済社会総合研究所研究官)

要旨

1.なぜ「14歳」なのか?

仕事にも就こうとせず、かといって進学したり、専門的な技能を身につけようと職業訓練を受けているわけでもない若者を、イギリスでは「ニート(NEET; Not in Education, Employment, or Training)」と呼んでいる。イギリスでは10代後半のおよそ9パーセントがニートであるという指摘がなされ、1997年以降、イギリスでは内閣府に社会的排除ユニット(Social Exclusion Unit)が設立され、ニートをはじめ、社会的排除者への個別対策を進めてきた。

しかし、ニート問題はイギリスに限らず、日本でも確実に深刻化しつつある。日本版ニートと呼べる若者は、25歳未満に限っても2002年で30万人いる。1998年から3倍に増えた。こうしたニートの多くは、就業支援すら受けようとしない可能性が高い。現状のほとんどの就業支援策から事実上排除される若者に対して、どのような個別支援策が必要であり、効果的であるかを考えるのは、今後の経済社会情勢のためにも喫緊の課題となるであろう。あわせて社会的に排除される若者を極力生み出さない仕組みを整備することも不可欠である。我々が、兵庫県と富山県の14歳の就業体験事業に注目した最大の理由はそこにある。

2.兵庫県と富山県の14歳の就業体験事業

両県の14歳の就業体験事業は、実際にどのような効果を及ぼしたのだろうか。まず挙げられるのは、経験した本人による体験への圧倒的な肯定的評価である。さらに驚きなのは、不登校の生徒で5日全日参加した生徒の体験後の登校率が上昇する事実である。全日参加した生徒のおよそ3人に1人は、実施2ヵ月後には以前に比べて登校率が上昇している。1990年代以降、趨勢的増加に歯止めをかけることができず、97年度以降、年間10万人を超え続ける中学不登校の生徒に対し、明確な処方策がないのが事実である。そのなかで、部分的ではあるにせよ、居場所を探す、やり直しのきっかけとしての、一つの光明を与える14歳の就業体験事業の意義は小さくない。兵庫県、富山県の両自治体の取り組みが一定の成果を挙げているのは、そこには目的と運用方法を体現する明確な「システム」が存在しているためである。システムの基本構成について、特に重要なのは(1)「5日間」実施の必要性(2)少人数単位での受入れ(3)生徒本人たちに体験希望先を考えさせる仕組み(4)学校、地域、家庭が連携した受け入れ先の開拓(5)事故に対する細心の注意(6)自治体内のすべての公立中学校が実施(7)学校、地域、家庭の主体性優先の7点である。

本文のダウンロード

若年就業対策としての「14 歳の就業体験」支援別ウィンドウで開きます。(PDF形式 487 KB)

全文の構成

  1. 2ページ
    (要旨)
  2. 3ページ
    1.なぜ「14 歳」なのか?
  3. 5ページ
    2.事業の概要と共通点
  4. 7ページ
    3.職業体験事業に関する全国の実情
    1. 7ページ
      3.1 ほとんどが3日以内の実施
    2. 7ページ
      3.2 5日以上実施している自治体等の状況
    3. 8ページ
      3.3 教育行政と労働行政の連携
  5. 8ページ
    4.データからみた「14 歳体験」の効果
  6. 11ページ
    5.「システム」としての14 歳の体験事業
    1. 11ページ
      5.1 「5 日間」実施の必要性
    2. 12ページ
      5.2 少人数単位での受入れ
    3. 12ページ
      5.3 生徒本人たちに体験希望先を考えさせる仕組み
    4. 13ページ
      5.4 学校、地域、家庭が連携した受け入れ先の開拓
    5. 15ページ
      5.5 事故に対する細心の注意
    6. 15ページ
      5.6 自治体内のすべての公立中学校が実施
    7. 16ページ
      5.7 学校、地域、家庭の主体性優先
  7. 17ページ
    6.むすびにかえて:全国展開に向けた課題
  8. 19ページ
    調査の概要
  9. 21ページ
    参照文献
  10. 22ページ
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)