ESRI Discussion Paper Series No.101
阪神淡路大震災による損失に対して人々はどう対応したか?ミクロデータによる検証

2004年4月
  • 澤田 康幸(東京大学大学院経済学研究科助教授)
  • 清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

1995年1月17日、阪神淡路大震災が発生した。この全く予期しない震災は、歴史的にみても極めて巨額の損失をもたらしたにもかかわらず、その回復は急速だった。

しかし、その回復過程において、家計が震災による被害にどのように対応したかについては、これまであまり明らかになっていない。日本ではもともと自然災害へのリスク対処法についての研究が少ない。その上、支出の減少、貯蓄の取り崩し、借り入れ、所得移転といったいくつかの家計の対応のうち、どのような損失に対し、どの方法が実際に選択されたのかを同時に検証したものは皆無に近い。

本論文では、阪神淡路大震災による損失に対して、家計がどのように対処したのかを、豊富なミクロデータを用いて明らかにする。

2.手法

本論文で用いるデータセットは、1996年の兵庫県が実施した「震災後のくらしの変化からみた消費行動についての調査報告書」のミクロデータである。

もともと家計のリスクへの対処法としては、(1)支出の減少(生活費をやりくりする)や(2)貯蓄の取り崩し(老後の生活に備えるための貯蓄など)、(3)借り入れ(銀行、親戚、友人など)、(4)世帯外からの公的・私的な所得移転(義援金、公的な貸付制度や助成制度の利用など)の4つのカテゴリーがある。ここでは、家屋、家財など具体的な被害に対して、家計がそれぞれどのように対処したかを検証する。

3.分析結果の主なポイント

実証分析の結果、興味深い点がいくつか明らかになった。

  • (1)家屋の被害については、もっぱら借り入れによってまかなわれる。公的・私的な移転受け取りもある程度効果的であるものの、支出の減少はこの場合有効な対処法ではない。
  • (2)震災前にローンのない持家世帯は、借り入れを行うことが可能で、支出の減少によって対応する必要はなかった。
  • (3)家財の被害については、主に貯蓄の取り崩しによってまかなわれている。その傾向は年齢が高いほど強い。
  • (4)家屋の被害が大きい場合には、所得移転も有効な手段である。震災前に住宅ローンがあった世帯では、その確率が高い。

4.おわりに

以上のように、震災被害への対処は、どのような被害を受けたかによって異なることがわかった。家屋の被害に対しては、借り入れによって、家財の被害に対しては、貯蓄の取り崩しによってまかなわれる。

このような結果は、自然災害に対するセーフティネットを構築する上でも大きなインプリケーションを持つ。自然災害による被害は、多くの場合、政府がすべてをまかないきれるものではない。従って、借入に対する補助など、被害者の自己保険(self-insurance)機能を高めるような政策が不可欠である。

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全文の構成

  1. 3ページ
    Abstract
  2. 4ページ
    1. Introduction
  3. 5ページ
    2. The Model Framework
  4. 9ページ
    3. The Data Set and Empirical Results
  5. 12ページ
    4. Concluding Remarks
  6. 13ページ
    References
  7. Table
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