ESRI Discussion Paper Series No.103
政府の規模と経済成長
-先進国パネル分析に見る負の相関の再検証-

2004年5月
  • 茂呂 賢吾(内閣府政策統括官(経済社会システム担当)付参事官補佐(企画・計量分析担当))

要旨

1.問題意識

「適正水準を超える政府の存在は経済の活力を損なう」と考える論者は少なくない。しかし、政府の規模が経済活力(ないし経済成長率)に与える影響については、そのメカニズムについてコンセンサス形成が進んでいないばかりでなく、影響の度合いや影響の有無そのものについて異論も見られる。

本研究ノートでは、「政府規模と経済成長の相関分析」を1980年代以降の国別マクロ・データで再検証した。その際、単に相関を見るだけでなく、(1)政府の規模と経済成長の関係はどの程度頑健(robust)なのか、また、(2)政府支出の内容(消費、投資、移転等)によって、経済成長との関係は異なるか、といった問題意識を加えて分析を行った。

2.分析手法

本ノートでは、OECD諸国を対象とするパネルデータ(1981年以降2002年迄)での回帰分析を行う。その際、推計結果の頑健性を確認するため、a)対象国の選定如何によって結果がどの程度違ってくるか、b)各国の制度的特性の相違、あるいは計測誤差の可能性等を考慮しても結果は変わらないか、c)相関が逆の因果関係(経済パフォーマンスから政府規模へ)によって生じている可能性はないか、更に、d)経済成長を規定する政府規模変数以外の制御変数を加えても、政府規模と経済成長の関係は安定的か、といった観点での検討を行った点に特徴がある。

3.分析結果の主なポイント

分析の結果、1)政府の規模と経済成長には統計的に有意な負の関係がみられ、その関係は対象国の選択を変えても成立する、2)各国の制度的特性の相違、あるいは計測誤差の可能性等を考慮しても、また、景気循環局面の違いがもたらす逆因果(経済パフォーマンスから政府規模へ)の可能性を考慮しても、両者の負の関係は否定できない、3)経済成長を規定する政府規模変数以外の制御変数を加えても、政府の規模と経済成長の負の関係は安定的である、等の点が明らかになった。また、政府支出の性質如何で経済成長との関係は異なっており、政府消費等の影響は、社会保障支出や利払費等の移転支出以上にマイナスの影響が大きい結果となった。

4.むすび

本ノートの結果は、(先進諸国において)大きな政府が経済成長にマイナスの影響を与えている可能性を示唆している。そうした可能性を完全には否定できない以上、小さな政府の選択はリスク回避の意味で正当化できるだろう。今後、政策インプリケーションをより豊富なものにしていくためには、本ノートのようなマクロ的な分析だけでなく、制度設計等ミクロ的な分析が重要になろう。

JEL Classification: E62; H50; O40

Key words: 政府の規模、政府支出、経済成長

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全文の構成

  1. 2ページ
    (要旨)
  2. 4ページ
    1.はじめに
  3. 6ページ
    2.政府の規模指標について(政府総支出vs. 潜在的国民負担率)
  4. 6ページ
    3.政府の規模と経済成長の関係
  5. 8ページ
    4.政府の規模と経済成長の相関
    1. 8ページ
      4.1 単回帰による分析(先行研究との比較)
    2. 10ページ
      4.2 対象国の限定
  6. 11ページ
    5.推計結果の頑健性I:バイアス及び逆因果への配慮
    1. 11ページ
      5.1 各国特有の制度要因、計測誤差への対応
    2. 13ページ
      5.2 逆因果の可能性
  7. 14ページ
    6.推計結果の頑健性II:説明変数の追加
    1. 14ページ
      6.1 重回帰モデルに含めた追加説明変数
    2. 15ページ
      6.2 重回帰モデルの定式化
  8. 16ページ
    7.経済性質別の政府支出と経済成長
    1. 16ページ
      7.1 支出の4分割と定式化
    2. 17ページ
      7.2 推計結果
  9. 18ページ
    8.結論
  10. 20ページ
    データ出典
  11. 20ページ
    参考文献
  12. 22ページ
    図表
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