ESRI Discussion Paper Series No.107
事業所内従業員年齢構成と雇用変動の関係--再考

2004年6月
  • 篠崎 武久(東京大学社会科学研究所)

要旨

1.問題意識

90年代末から2000年代の雇用創出・喪失分析から得られた重要な知見の一つは、個々の企業、事業所単位まで分析対象を細かくして雇用変動を検証すると、雇用変動の大きさは、産業や企業規模の違いよりも、むしろ個々の企業、事業所が持つ固有の要因に大きく左右されているという結果である。本稿は各事業所が有する固有の要因として事業所内の従業員年齢構成の高齢化に注目し、これが事業所の雇用変動に与える影響を分析する。

2.分析手法

スイッチ回帰モデル (switching regressionsまたはswitching model)を用いて、各事業所が、雇用創出部門と喪失部門のどちらに区分されるかをモデル内で決定し、各部門内で従業員年齢構成の高齢化が雇用変動に与える影響を推定した。またスイッチ回帰モデルに先立ち、多項ロジットモデルを用いて、どのような特徴をもつ事業所が雇用創出部門、喪失部門にそれぞれ区分されやすいのかを検証した。

3.分析結果の主要なポイント

多項ロジットモデルの結果からは、従業員年齢構成が高齢化している事業所ほど雇用喪失部門に入る確率が高く、高齢化していない事業所ほど雇用創出部門に入る傾向が見られた。

スイッチ回帰モデルの結果からは、創出部門では年齢構成が雇用変動に与える影響は必ずしも有意でないが、雇用喪失部門では従業員年齢構成が高齢化しているほど雇用が失われていることが明らかとなった。雇用創出部門と喪失部門の振り分けを決定するスイッチ方程式の結果からは、製造業、卸売・小売業、金融・保険・不動産業の事業所が喪失部門に入る確率が高かったことなどが確認できた。

4.今後の課題

従業員年齢構成が高齢化した事業所は、人件費の増大などを通じて新規採用が抑制され、雇用の増加も抑制されている可能性がある。また製造業、卸売・小売業、金融・保険・不動産業の事業所ほど喪失部門に入りやすいとの結果は、90年代から2000年代にかけてこれらの業種が強い雇用削減圧力に直面したことを示している。

今後は、事業所の業績や付加価値額、設立からの経過年数など、本稿ではデータの制約上明示的に取り扱えなかった事業所固有の変数を追加して、本稿の結果が頑健であることを確認する必要がある。

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全文の構成

  1. 2ページ
    (要旨)
  2. 3ページ
    1 本稿の目的
  3. 5ページ
    2 分析データ
    1. 5ページ
      2.1 データの概略
    2. 5ページ
      2.2 データセット
  4. 5ページ
    3 雇用創出部門、不変部門、喪失部門を分ける要因
    1. 6ページ
      3.1 分析の方法
    2. 7ページ
      3.2 多項ロジット分析の結果
  5. 8ページ
    4 雇用変化率を規定する要因
    1. 8ページ
      4.1 分析の方法
    2. 9ページ
      4.2 スイッチ回帰モデルの分析結果
  6. 10ページ
    5 結論
  7. 12ページ
    参考文献
  8. 13ページ
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