ESRI Discussion Paper Series No.111
気候変動政策とポリシー・ミックス論

2004年7月
  • 諸富 徹(内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官、京都大学大学院経済学研究科助教授)

要旨

近年、地球温暖化問題を解決するために経済的手段を用いようとする国が、ますます増大しつつある。日本はこれまで、先進国の中で経済的手段の利用に最も消極的な国の一つだとみられてきたが、近年は、地方環境税導入の動きが全国的に広がりつつあるし、環境省の中央環境審議会も、2003年8月に温暖化対策税の具体的な制度設計案を公表した。

経済的手段を「ポリシー・ミックス」の枠内で活用していくという傾向も、最近ますます顕著になりつつあり、このことが環境経済学の研究動向にも影響を与えつつある。つまり、かつては政策手段を個々ばらばらに切り離してその性能分析を行うのが常道であったが、現在では、ある政策手段を他の政策手段と併用したときに、そのポリシー・ミックスがどのような資源配分上の効果や環境政策上の効果を発揮するのかを分析することに焦点が当てられるようになってきている。

本稿は、環境経済学における政策手段の選択問題からポリシー・ミックスの経済学的根拠に至るまで理論的潮流を展望しながら、その研究フロンティアをさらに前進させることを試みた。その結果明らかになった点としては、以下の点を挙げることができよう。
第一に、政策手段の選択問題を考えるうえで、なお「ワイツマン定理」の重要性に変わりはないが、しかし、限界費用と限界便益が共に不確実であるという「ワイツマン定理」が想定していなかった条件下では、それが成立しない状況が生まれる。第二に、最近のポリシー・ミックスに基づいた政策提案は、単一政策手段の失敗を緩和し、経済厚生の損失を抑制する機能を持っていることが分かる。第三に、価格規制と量的規制の同一排出源に対する併用は、必ずしも資源配分上の歪みをもたらすことなく両立可能であることが示された。第四に、環境税と組み合わされた自主協定は、分配問題を緩和しながら環境政策上の効果を担保する機能を持つだけでなく、実は規制者が協定締結の過程を通じて被規制者側の情報を入手し、「情報非対称性問題」を克服するための手段として機能させることが可能であることが、デンマークの事例研究より明らかになった。

JEL Classification: H23

Key Words: 気候変動政策、ポリシー・ミックス、環境税、自主協定

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全文の構成

  1. 4ページ
    1.はじめに
  2. 5ページ
    2.政策手段の選択問題と気候変動政策
    1. 5ページ
      2.1 価格規制か量的規制か~ワイツマン定理~
    2. 7ページ
      2.2 ワイツマン定理再考
    3. 10ページ
      2.3 ポリシー・ミックスの経済学的根拠
  3. 12ページ
    3.ポリシー・ミックスによる気候変動政策の構築
    1. 12ページ
      3.1 なぜ政策手段を組み合わせるのか
    2. 13ページ
      3.2 ポリシー・ミックス提案としての「セイフティ・バルブ」
    3. 16ページ
      3.3 量的規制と価格規制の同時併用
  4. 17ページ
    4.自主協定とポリシー・ミックス
    1. 17ページ
      4.1 自主協定研究の到達点
    2. 19ページ
      4.2 デンマーク自主協定制度の革新的意義
  5. 23ページ
    5.おわりに
  6. 23ページ
    参考文献
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