ESRI Discussion Paper Series No.112
無償労働と所得分配
- 収入階層別の無償労働の貨幣評価 -

2004年8月
  • 浜田 浩児(内閣府経済社会総合研究所情報研究交流部長)

要旨

I.趣旨

市場で対価を得ずに行われる無償労働の取扱いは、所得分配に関する重要な分析課題の1つである。家事、育児、介護等の無償労働は、その便益を家族が受け、世帯の生活が豊かになっているという観点からは、市場で労働力を提供して対価の所得を得る有償労働と同様に、経済的な価値を有していると考えられる。

国民経済計算(SNA)においても、無償労働はサテライト勘定の対象となっている。サテライト勘定は、SNA本体(中枢体系)との結びつきを保ちながら、補完的・代替的な概念の使用等によって、社会的関心をひく事柄について追加的な情報を提供するものである。

II.推計範囲及び推計手法

最新の2001年時点を中心に、1981年から5年ごとに世帯収入階層別の無償労働の貨幣評価額を推計し、その収入階層間格差等を分析した。ただし、無償労働の貨幣評価を適切に行うことが難しく、無償労働が国民経済計算(SNA)本体の所得概念に含まれないことに則して、無償労働の貨幣評価額は所得の内数ではなく外数とした。

推計対象となる無償労働の範囲は、無償労働のうちサービスを提供する主体とそのサービスを享受する主体が分離可能で、かつ市場でそのサービスが提供されうる行動(家事、介護、育児等)とした。無償労働の貨幣評価については、家事等が産み出すサービスの価値を直接把握、評価することが困難なため、無償労働の時間を賃金で評価する方法により、機会費用法(無償労働を行うために市場に労働を提供しないことによって失った賃金で評価)と代替費用法(無償労働によって生産しているサービスと類似のサービスを市場で供給している者の賃金で評価)を用いた。

III.推計結果の主要なポイント

無償労働額は収入階層間で似た水準にあり、時系列の推移でも各収入階層ともほぼ同様に増加している。

このため、無償労働額の収入階層間格差は、収入格差に比べてごく小さい。推移を見ても、収入格差が拡大しているのに対し、無償労働額の収入階層間格差はほとんど変化していない。

IV.結び

以上のように、無償労働額の収入階層間格差はわずかであり、収入格差が拡大しているのに対し、ほとんど変化していない。

ただし、実際に無償労働が生み出したアウトプットにかかわらず、労働時間が長く適用賃金が高ければ貨幣評価額が大きくなる等、推計方法には課題がある。

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全文の構成

  1. 1ページ
    (要旨)
  2. 4ページ
    はじめに
  3. 4ページ
    I 推計方法
    1. 4ページ
      1.推計範囲
    2. 5ページ
      2.貨幣評価の方法
    3. 6ページ
      3.基礎データと具体的な推計方法
  4. 8ページ
    II 推計結果
    1. 8ページ
      1.概要
    2. 9ページ
      2.無償労働の貨幣評価額の世帯収入階層別比較
  5. 10ページ
    III 無償労働額の収入階層間格差
    1. 10ページ
      1.行動種類別無償労働額の収入階層間格差
    2. 11ページ
      2.無償労働額の収入階層間格差の推移
  6. 12ページ
    結論と課題
  7. 14ページ
  8. 23ページ
    (参考文献)
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