ESRI Discussion Paper Series No.117
アジア経済における少子高齢化の影響に関する数量分析

2004年9月
  • 島澤 諭(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、秋田経済法科大学専任講師)
  • 細山 英俊(内閣府経済社会総合研究所政策調査員)

要旨

1.問題意識

今世紀を通じて世界の多くの国で高齢化の進展が見込まれている。高齢化の進展は先進国のみならず世界共通の現象であるが、高齢化の進展のスピード、局面については、多くの国では一致していない。特に、アジア諸国において、高齢化進展のスピードは著しいものがある。

高齢化は、ライフサイクル仮説にしたがえば、貯蓄率を低下させることとなる。貯蓄率の低下は、他の条件が一定であるならば、投資率を低下させることとなるため、経済成長率を低下させる方向に働くこととなる。また、賦課方式的な年金制度が存在する場合には、将来世代の負担が増加することとなり、将来世代の効用水準は低下してしまうこととなる。実際、先進国を対象とした一般均衡型世代重複モデルによるシミュレーション分析では、高齢化の進行は、経済成長率を低下させるとともに、将来世代の効用水準を低下させることを見出している。

しかしながら、これまでのシミュレーション分析では、少子高齢化のデメリットについては、把握されているものの、養育コストの低下といった少子化のメリットについては、余り考慮されてきてはいない。

本稿では、少子高齢化が近い将来確実に進展すると見込まれているものの、それによっていかなる影響を被るのか、定量的な分析の蓄積がなされてきていないアジア諸国、具体的には、-中国、韓国、台湾、シンガポールおよび日本-を対象として、少子高齢化のメリットとデメリットとを、家計の最適化行動に基づき、一般均衡分析の枠組みで取り扱うことが可能な一般均衡世代重複シミュレーションモデルを用いることで分析を行う。さらに、国際的な潮流となっている年金制度改革といった政策変更が各国経済に与える影響についてもあわせて分析を行う。

2.分析手法

まず、本稿においては、Auerbach and Kotlikoff(1987)の業績以降、少子高齢化の持つ経済に対する潜在的な影響を把握するのに、もっとも適切と考えられる一般均衡型世代重複モデルの概要を解説した後、各国の最新時点の経済状況を再現するようパラメターを与え、カリブレーションを行う。次に、国際連合推計の将来人口データセットの下でシミュレーション分析を行うことにより、少子高齢化が各国経済に与える影響について定量的な把握を行う。さらに、年金改革が各国のマクロ経済に与える影響について分析を行う。

3.分析結果の主要なポイント

高齢化の進展により貯蓄率は低下することが分かる。その結果、経済成長率も低下することとなる。特に、中国における経済成長率の低下幅は著しく最大で6%ポイント程度、他のアジア諸国でも3~4%ポイント程度の下落幅に達することが分かる。

また、政策変更シミュレーションからは、年金制度改革は将来世代の負担を軽減し、将来世代の利用可能な資源を増加させることで、将来世代の効用水準を増加させることが分かる。

4.まとめ

以上のシミュレーション結果から、(1) 少子高齢化の進行により、経済成長率の低下は不可避であること、(2)賦課方式的な公的年金制度の縮小といった政策変更は、将来の経済成長率を高めるため、将来世代の効用が上昇すること、が明らかになった。

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全文の構成

  1. 2ページ
    Abstract
  2. 3ページ
    1. Introduction
  3. 4ページ
    2. Population Aging in Five Asian Economies: Some Basic Facts
  4. 7ページ
    3. A Stylized Overlapping Generations Model
    1. 8ページ
      3.1 Household Sector
    2. 10ページ
      3.2 Firm Behavior
    3. 10ページ
      3.3 Government
    4. 11ページ
      3.4 Public Pension
    5. 11ページ
      3.5 Equilibrium Condition
  5. 12ページ
    4. Simulation Results
    1. 12ページ
      4.1. Calibrating the Model
    2. 13ページ
      4.2. Simulation Analysis
    3. 14ページ
      4.3. Simulation Results
    4. 15ページ
      4.4. Policy Change Scenario
  6. 16ページ
    5. Conclusion
  7. 16ページ
    References
  8. 18ページ
    Table, Figure
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