ESRI Discussion Paper Series No.119
日本の実質経済成長率は、なぜ1970年代に屈折したのか

2004年10月
  • 原田 泰(大和総研チーフエコノミスト、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)
  • 吉岡 真史(内閣府官房参事官、前内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)

要旨

1.問題意識

戦後の日本経済は1970年代と1990年代に2回の成長率の屈折を経験している。90年代の成長屈折については、それが何ゆえに生じたのかについての分析がある。しかし、70年代の屈折についてはほとんど分析がない。本稿は、そのギャップを埋めようとするものである。

2.目的

本稿の目的は、70年代の成長屈折が何ゆえに起こったのかということを明らかにすることである。そのために、まず、石油ショックによって70年代の成長屈折が生じたという一般の通説とよりアカデミックな通説を整理した後に、それへの疑問を述べる。次に、広く認められる経済理論と計量分析手法で、成長屈折の謎に挑戦する。

3.分析手法

経済成長は資本と労働の投入と技術進歩によって説明されるという新古典派的成長論を踏まえて、資本と労働の円滑な投入に錯乱を与える要因、公的資本ストック、技術進歩に影響を与える人口移動、先進国経済との格差、原油価格を説明変数としたVARモデルを計測する。

4.結論

計測の結果、以下のようなことが分かった。1970年代初まで日本の成長率が高かったのは人口移動、技術格差への反応が大きかったからである。日本のキャッチアップ過程の進展により技術格差が縮小したことが成長率を屈折させたとは思われない。70年代までは、民間資本の効率も公的資本の効率も高かったが、その後、低下した。成長率の屈折に関して、石油ショックの影響はほとんど見られなかった。金融政策のような資本と労働の円滑な投入に錯乱を与える要因も成長率の屈折に影響を与えているが、これが屈折に永続的な影響を与えたかどうかは分からない。

要するに、70年代以降、成長率を屈折させたものは石油ショックや技術格差の縮小のような外的な要因ではなく、外的なショックに対して日本経済が反応する力の弱くなったことにある。ただし、なぜそうなったかは、本稿の分析からでは明らかではない。

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全文の構成

  1. 2ページ
    (要約)
  2. 4ページ
    はじめに
  3. 4ページ
    1.問題の所在
  4. 4ページ
    2.これまでの研究成果
  5. 5ページ
    3.基本的考え方とVAR モデルの推計
    1. 6ページ
      3.1 データの詳細
    2. 9ページ
      3.2 単位根検定
    3. 9ページ
      3.3 2変数VAR プロセスによるグランジャー因果の測定
    4. 11ページ
      3.4 多変数VAR プロセスによるインパルス応答関数
    5. 11ページ
      3.5 期間分割した推計結果
      1. 12ページ
        3.5.1 1957-75 年の結果
      2. 13ページ
        3.5.2 1976-2003 年の結果
  6. 15ページ
    結論
  7. 16ページ
    邦語文献
  8. 16ページ
    英語文献
  9. 17ページ
    データ出所
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)