ESRI Discussion Paper Series No.128
要介護者世帯調査に基づく在宅介護サービスの将来需要予測
-2003年度データによる再推計-

2005年2月
清水谷
(一橋大学経済研究所助教授・内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)
野口晴子
(東洋英和女学院大学助教授・内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)

要旨

1.趣旨、問題設定

公的介護保険導入からはや5年が過ぎようとしている。この間介護サービスの利用は順調に増加し、その多くは在宅介護サービスの増加によってもたらされている。本稿は、要介護者を抱える世帯に対して実施した「要介護者世帯調査」の最新版(2003年度版)を用いて、2002年度調査までのデータを用いた清水谷・野口「要介護認定率の上昇と在宅サービスの将来需要予測-要介護者世帯への介護サービス利用調査による検証-」(内閣府経済社会総合研究所ディスカッションペーパーNo.60)の在宅介護サービスの将来予測を改定した。

前回と同様、本論文では、要介護者を抱える世帯へのアンケート調査のミクロデータを用いて、本論文では、認定率の決定要因や認定からの期間が受給者率や一人当たり介護費用に及ぼす影響を定量的に検証し、それを用いて、在宅介護サービス需要の将来推計を行った。

2.手法

本論文では、まず、内閣府が要介護者を抱える世帯に対して独自に実施した「高齢者の介護利用状況に関するアンケート調査」(2001年、2002年および2003年)のミクロデータを活用して、認定率、受給者率、一人当たり介護費用の3つの要素の決定要因を検証する。具体的には、

  • (1)認定率の決定要因をsurvival分析によって検証する。
  • (2)認定からの期間が受給者率に与える影響をprobit分析によって検証する。
  • (3)認定からの期間が一人当たり介護費用に与える影響をtobit分析によって検証する。

さらに、将来人口推計とこれらの実証結果をもとに、在宅介護サービス需要の将来推計を行う。

3.分析結果の主要なポイント

実証分析の結果、2001年度サンプルでは約3年間であった認定を受けるまでの平均年数は約1.5年間と短縮したことが明らかになった。さらに、前回の分析結果と同様、制度に関する学習効果により、認定を受けてから時間が経過するほど、受給者率や1人当たりの介護サービス費用が増加する傾向にあることがわかった。

在宅サービス(訪問サービス・通所サービス・短期入所)の将来需要の推計を行うと、在宅介護サービス費用は、前回の結果が多少上方に修正されて、2010年には2003年現在の約1.6兆円の2.2倍にあたる3.6兆円、2015年には3倍に当たる5.0兆円、2025年には前回の推計と同様5.3兆円であることが見込まれる。

4.結び

本論文は在宅介護サービス需要は将来的に大きく拡大することが見込まれることを明らかにした。前回の実証結果を比べると、認定率が高まりが速くなっているのに、将来の在宅サービス需要が大幅に改訂されないのは、介護サービス費用の増加幅がこれまでよりもむしろ小さいからである。在宅介護サービス市場は、いまだ全体的にその投入量が小さい領域にあり、生産の効率性が上がり、限界生産性が逓増する段階にあると考えることができる。従って、formal home careと家族によるケアとの分業の効率化により、要介護者の「健康」の生産量を1単位増加させるのに需要される在宅サービスが減少し、生産の効率性が上昇しているからであろう。

今後の課題としては、施設介護サービス需要についても、ミクロデータによる検証に基づいた推計を行い、施設介護と在宅介護の代替関係についても検証しつつ、介護サービス市場全体の将来需要についても、的確に把握していくことが必要である。

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要介護者世帯調査に基づく在宅介護サービスの将来需要予測 -2003 年度データによる再推計-別ウィンドウで開きます。(PDF形式 166 KB)

全文の構成

  1. 2ページ
    要約
  2. 3ページ
    1. はじめに
  3. 4ページ
    2. 「高齢者の介護利用状況に関するアンケート調査」の調査概要
  4. 7ページ
    3. 認定率の動向とその要因に関する定量的検証
  5. 10ページ
    4. 認定期間が受給者率と一人当たり介護費用に与える影響
  6. 12ページ
    5. 在宅介護サービス需要の将来需要予測
  7. 14ページ
    6. 結論と政策的インプリケーション
  8. 16ページ
    参考文献
  9. 図表
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