ESRI Discussion Paper Series No.130
SNA産業連関表によるGDPデフレータ変動の要因分解

2005年3月
  • 鈴木 英之(日本政策投資銀行地域政策研究センター主任研究員、前内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)

要旨

1.研究の趣旨

GDPデフレータの下落傾向が続いており、他の物価指数との乖離もみられる。

GDPデフレータの変動要因を分析する場合には、通常、最終需要の需要項目ごとのデフレータによる寄与度分解、または、回帰分析により利潤や賃金との関係を分析する方法、が取られている。前者の場合には、GDPデフレータの付加価値デフレータとしての性格を分かりにくい点が難点であり、後者の場合には、誤差が大きくなりがちで精度の高い分析結果を得るのが困難である点が難点である。

本稿は、SNA産業連関表を用いることにより、投入と産出を実質化するという国民経済計算(SNA)のダブルデフレーション法に沿いつつ、通常用いられているGDPデフレータと極力誤差が出ない方法で、GDPデフレータの変動を生産者価格、流通、産出・投入構造等の要因に分解する手法の定式化について検討を行っている。また、この定式化を、1995~2002年のGDPデフレータに対する適用するとともに、他の物価指数で構成品目ごとの寄与度が検討されることを踏まえ、品目毎の動きがGDPデフレータに与えている影響を集計し、この間のGDPデフレータの変動について検討を行っている。

2.分析方法

生産者価格表であるSNA産業連関表を使用することにより、産出価格と投入価格は統一的に扱われ、生産者価格と流通マージンに分けられる。また、SNA産業連関表が競争輸入型で作成され、国産品と輸入品が同一のセルで処理されていることに対応し、国産品と輸入品等の品目構成の影響を投入価格から分離することにより、輸入品の価格変化等の影響を抽出している。これらにより、GDPデフレータの変動を、1) 産業構造要因、2) 投入構造要因、3)生産者価格要因、4) 輸入品の価格変化等の影響を示す品目構成要因、5) 流通部門要因に分解する方法を定式化している。

こうした要因分解の定式化は必ずしも一意的ではないが、本稿では、1) 産業構造要因の抽出を実質付加価値シェアで行う場合と、産出シェアで行う場合、2) 産業構造要因のうち個々の産業の寄与度を、「ある産業のシェアが増加した場合にGDPデフレータの上昇要因とする」場合と、「当該産業のシェアの変化が、GDPデフレータを上昇させる方向の産業構造全体の変化に寄与する場合に、上昇要因とする」場合の比較検討を行っている。

3.研究結果の主なポイント

定式化により、1) GDPデフレータに対し、国産品の生産者価格上昇は上昇要因、輸入品の価格上昇は下落要因であるが、これらの影響の大きさは、その品目が最終需要に向けられる割合に依存すること、2) 投入構造の変化がGDPデフレータの上昇要因となるか否かは、その投入デフレータとGDPデフレータの水準の関係に依存することを示している。

また、95年以降のGDPデフレータの変動については、(1)IT価格の下落、原油価格の上昇、建設不況等の影響の大きさを示すとともに、(2)GDPデフレータが下落幅を拡大した99年以降は、価格下落がより広範囲になるとともに、流通部門の影響が大きくなっていることを指摘している。(3)99年以降の流通部門のGDPデフレータへの影響は、産出価格が下落する一方、投入価格が上昇するという価格の非対称な動きによるものであることを示している。

4.結び

本稿は、消費者物価や企業物価と比べ、構成要素による要因分解が困難なGDPデフレータの要因分解の定式化について検討しており、今後このような要因分解が広く行われることを期待したいが、(1)変動要因の分解の定式化は必ずしも一意的ではなく、分解された変動要因がどのような意味を持っているかの検討が不可欠であること、(2)分析に使用する品目分類の大きさによって、要因分解後の数値が変わってくること、に留意する必要がある。

なお、SNAの実質・デフレータについては、固定基準年方式から連鎖方式への移行が進められつつある。本稿は固定基準年方式の場合のGDPデフレータ変動の要因分解を定式化しているが、付注により、連鎖方式の場合であっても同様な定式化が行えることを示している。

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全文の構成

  1. 2ページ
    はじめに
  2. 5ページ
    1 GDP デフレータ変動の要因分解の定式化
    1. 5ページ
      1.1 個々の産業の付加価値デフレータ
    2. 6ページ
      1.2 産業構造に実質付加価値シェアを使った要因分解
    3. 8ページ
      1.3 産業構造に実質産出シェアを使った要因分解
    4. 11ページ
      1.4 産業構造定式化の選択と投入構造変化の影響
    5. 11ページ
      1.5 産出・投入価格と品目構成
    6. 14ページ
      1.6 生産者価格変化の影響
    7. 17ページ
      1.7 流通マージンと定式化の全体像
  3. 19ページ
    2 1995~2002 年のGDP デフレータ
    1. 19ページ
      2.1 IT 化による価格下落
    2. 20ページ
      2.2 原油輸入価格上昇による投入コストの上昇
    3. 22ページ
      2.3 価格下落への投入・産出構造への影響
    4. 23ページ
      2.4 流通部門要因
    5. 24ページ
      2.5 総括-IT 化、輸入原油の上昇、建設不況、流通
  4. 27ページ
    おわりに
  5. 28ページ
    付注1 産業構造に実質付加価値シェアを使ったGDPデフレータ変動の要因分解
  6. 32ページ
    付注2 産業構造要因の産業別分解の別法
  7. 36ページ
    付注3 連鎖方式デフレータの変動要因の分解
  8. 40ページ
    参考文献
  9. 40ページ
    参考URL
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