ESRI Discussion Paper Series No.132
日本企業による海外研究開発活動
-ミクロデータによる分析-

2005年3月
  • 戸堂 康之(東京都立大学助教授)
  • 清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授・内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)

要旨

1.趣旨、問題設定

多国籍企業による海外での研究開発活動は世界的にも著しく拡大している。日本企業もその例外でなく、安価な労働力を求める海外直接投資に加えて、海外での研究開発活動に力を入れてきている。内生的経済成長理論のように、研究開発活動が経済成長の重要な源泉だとすれば、研究開発活動の海外移転は日本の潜在成長率に悪影響を与える可能性もあろう。しかしその成果を日本に還元することができれば、企業のグローバルな研究開発拠点の最適配分と日本の経済成長への貢献の両立が可能となる。

本研究では、経済産業省「企業活動基本調査」と「海外事業活動基本調査」のミクロデータをマッチさせることで、日本企業の海外研究開発活動の実態を明らかにするとともに、その決定要因や効果についても定量的な検証を試みる。

2.手法

本研究では企業レベルのデータを用いて、海外研究開発活動の決定要因とその効果、親企業への影響を明らかにする。その際(1)海外での進んだ知識や技術を習得するための「知識・技術指向型」研究開発活動(innovative R&D)と(2)海外市場にあった製品の改変のための「マーケット指向型」研究開発活動(adaptive R&D)の2種類に分けて分析を行う。

まず、付加価値に占める研究開発費用を被説明変数として、親会社や子会社の知識レベル、受入国の知識レベルや市場規模といった要因で説明し、海外研究開発活動の決定要因を分析する。次に、親企業、海外子会社の全要素生産性上昇率を被説明変数とし、親企業の研究開発活動、子会社の2つの種類の研究開発活動の付加価値額に占める割合といった要因で説明し、海外研究開発活動が生産性に及ぼす影響を検証する。

3.分析結果の主要なポイント

実証分析の結果、以下の点がわかった。

  • (1)「知識・技術指向型」研究開発活動(innovative R&D)は親企業にもプラスの影響を与え、親企業の生産性上昇に寄与している。
  • (2)「マーケット指向型」研究開発活動(adaptive R&D)は親企業の知識や技術を利用することで、子会社の生産性向上に寄与している。
  • (3)海外での研究開発活動によって、親企業の研究開発活動が親企業の生産性上昇に与える限界効果を高めるという「補完性」(complementarity)は見られない。

4.今後の課題

「知識・技術指向型」海外研究開発活動が親企業の生産性に与える影響は、親企業自身の研究開発活動と同程度だが、子会社の生産性上昇には有意にプラスの影響をもたないために、全体の効果はより小さい。また海外と国内の研究開発活動の間で「補完性」もみられない。こうしたことが他の先進国に比べて日本企業による海外研究開発活動の規模が小さかった要因であろう。したがって、海外研究開発活動から得られるプラスの影響を高めるためには、今後国内と海外の研究開発活動の相乗効果をより高めていく必要があろう。

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全文の構成

  1. 1ページ
    Abstract
  2. 2ページ
    1 Introduction
  3. 4ページ
    2 Theoretical Framework
  4. 8ページ
    3 Estimation Equations and Methods
    1. 8ページ
      3.1 Determinants of Overseas R&D Activities
    2. 9ページ
      3.2 Impacts of Overseas R&D on Home and Overseas Productivity
  5. 12ページ
    4 Data
    1. 12ページ
      4.1 Description of the Data Sets
    2. 13ページ
      4.2 Measuring Productivity Levels
    3. 14ページ
      4.3 Summary Statistics
  6. 15ページ
    5 Estimation Results
    1. 15ページ
      5.1 Determinants of Overseas R&D Activities
    2. 17ページ
      5.2 Impacts of Overseas R&D on Home TFP Growth
    3. 18ページ
      5.3 Impacts of Overseas R&D on Overseas TFP Growth
    4. 19ページ
      5.4 Comparison with Existing Studies
  7. 21ページ
    6 Conclusions
  8. 22ページ
    Appendix: Data and Variables
  9. 24ページ
    References
  10. 28ページ
    Tables
  11. 34ページ
    Appendix Tables
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