ESRI Discussion Paper Series No.134
企業活動とコンプライアンス
-アンケート調査を踏まえた法的責任のあり方について-

2005年4月
  • 今井 猛嘉(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、法政大学法科大学院教授)
  • 白石 賢(内閣府経済社会総合研究所特別研究員)
  • 岡田 大作(内閣府経済社会総合研究所研究官)

要旨

欧米では、2000年のエンロン事件を代表とする企業犯罪が、大きな社会問題となった。わが国でも、2000年ぐらいから食品の虚偽表示、リコール問題などわが国を代表とする企業での不祥事が新聞紙上を賑わしている。しかしながら、企業の不祥事・犯罪の実態やそれに対する企業の現実の対応について、これらを統計的に明らかにしたものは少なかった。そこで、今回、企業の不祥事・犯罪の実態やそれに対する企業の対応に係る実態について、アンケート調査により解明を試みた。それを基に企業の社会的責任、特に企業による反社会的行為が生じた際の、当該企業に対する刑事責任のあり方について基礎的な考察を加えた。

アンケート結果からは、コーポレートガバナンス(corporate governance)、コンプライアンス・プログラム(compliance program)、CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)の三者については、おおむね企業も認知していることが認められる。とりわけ、前二者については歴史的にもよく内容が認知されているが、CSRとは何かということについては、いまだ企業自身も十分に把握していない点があるようである 。その理由としては、商事法と刑事法では概念の把握が異なりうることに加えて、理論的にも、これら三つの概念が企業の刑事責任につき如何なる意義を有するかが、十分検討されていないことが、影響を及ぼしているように思われる。

それでは、学界あるいは官庁等立法関係者の間では、今後、コンプライアンス・プログラムについて、どのような議論を展開すべきであろうか。企業はコンプライアンス・プログラムの実施に相当なコストを掛けており、その結果として、コンプライアンス・プログラムを企業の訴追・処罰に対する「保険」と捉える風潮も存在するように推測される。しかし、注意すべきは、コンプライアンス・プログラムの実施が、即、企業の「免責」にはつながらないという点である。企業の免責の可否は、あくまで、刑事法の理論に照らして判断されるべき事項である。したがって、コンプライアンス・プログラムを、企業活動の保護ないしは企業犯罪防止のための有効な手段として活用するためには、そのようなプログラムの内容と実施につき、あるべき方向性を、刑事法の理論を踏まえて、提示していかなければならないように思われる。

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全文の構成

  1. (要旨)
  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 1ページ
    2. アンケートの概要
    1. 1ページ
      2.1 アンケートの対象
    2. 1ページ
      2.2 企業犯罪概念・法的制裁の類型とアンケートの設計
  4. 2ページ
    3. アンケート結果の概要
  5. 8ページ
    4.アンケート結果から抽出される理論的課題
  6. 10ページ
    おわりに
  7. 12ページ
    参考文献
  8. 別添 企業の社会的責任・コンプライアンス等に関するアンケート調査
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