ESRI Discussion Paper Series No.140
フリーターの増加と労働所得格差の拡大

2005年5月
  • 太田 清(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官、景気統計部長)

要旨

1.問題意識

日本は長い間、個人間の経済的格差に関し、平等な社会であると言われてきた。1990年代後半頃から、日本でも所得格差は拡大しているとの見方も出てきたが、家計所得や賃金統計などに見られる格差の拡大の多くは、人口の高齢化に伴う見かけ上の拡大にすぎないことが指摘されてきた。しかし、90年代の特に後半以降に起こった労働市場の変化の中で、最近では、所得格差は拡大しているのではないだろうか。本稿では労働市場の変化をもとらえた統計で、そのことを検証した。

2.分析手法等

所得格差や賃金格差に関する実証研究では、これまで非正規雇用者までカバーされていなかったが、本稿では非正規雇用をもカバーする統計を用いた。男性の労働所得(賃金など)について、ジニ係数等で個人間の不平等度(格差の大きさ)を計測した。人口の年齢構成の変化が格差の動向に見かけ上の影響を与えてしまうことを考慮し、年齢別に不平等度を算出した(年齢構成要因のコントロール)。特に若年層に分析の焦点を置いた。さらに、正規雇用者、非正規雇用者に分け、非正規の増加が全体としての格差の拡大にどのように影響しているかを計測した(対数分散等による要因分解)。

3.分析結果のポイントとインプリケーション

1990年代後半から最近にかけて、個人間の労働所得格差が拡大していることがわかった。いずれの年齢層でも格差は拡大しているが、特に若年層でその拡大テンポが速い。この若年層内における格差の拡大は、フリーター化など非正規雇用の増大の影響が大きい。

若年層の間での格差拡大は、日本社会の将来の姿を先取りしたものである可能性もある。本稿の分析結果は、若年者が職業能力(稼得能力)を獲得する機会を十分に持てるようにする政策が極めて重要であることを改めて示している。また、やや技術的な問題に関する含意であるが、経済的格差の拡大等、経済社会の重要な変化をできるだけ早期に察知できるよう、統計の整備が望まれる。

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全文の構成

  1. 2ページ
    (要旨)
  2. 5ページ
    1.はじめに
  3. 6ページ
    2.本稿の分析の特徴
    1. 6ページ
      2.1 3つの特徴
    2. 6ページ
      2.2 日本社会の将来の姿の展望に役立つ指標-特徴(1)
    3. 7ページ
      2.3 非正規雇用者を含めた分析-特徴2
    4. 9ページ
      2.4 年齢要因のコントロール-特徴3
  4. 9ページ
    3.先行研究
    1. 10ページ
      3.1 世帯ベースの所得格差に関する先行研究
    2. 12ページ
      3.2 労働所得(賃金など)の格差に関する先行研究
  5. 14ページ
    4.使用するデータ
  6. 15ページ
    5.個人間の労働所得格差の計測
    1. 15ページ
      5.1 計測手法
    2. 17ページ
      5.2 基本的統計量(有業者等の所得分布状況)
    3. 17ページ
      5.3 不平等尺度の計測結果
    4. 20ページ
      5.4 2種類の追加的なジニ係数の計測
  7. 22ページ
    6 結論と今後の課題
  8. 23ページ
    参考文献
  9. 28ページ
    図表
  10. 付表
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