ESRI Discussion Paper Series No.141
国民経済計算における持ち家の帰属家賃推計について

2005年5月
  • 荒井 晴仁(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)

要旨

1.問題意識

持ち家の帰属家賃は個人消費の一部として国民総生産(GDP)の約1割を占める。しかし、持ち家の帰属家賃は、実際の家賃データがなく、みなし計算に拠る推計項目であり、計数は推計方法に依存する。帰属家賃の推計を行っている国民経済計算、県民経済計算、産業連関表、全国消費実態調査を比較すると、同じ概念の計数が数兆~数十兆円の幅で異なっている。

これは統計利用者の立場からみると、好ましいことではない。少なくとも、計数の違いがどういう理由で生じているのかを明らかにし、可能な限り、推計方法と計数の統一を図ることが必要である。

2.分析手法

本論文では、国民経済計算、県民経済計算、産業連関表、全国消費実態調査の4つの統計における持ち家の帰属家賃のデータと推計方法を比較し、計数の差がなぜ生じているのかを理解するために、帰属家賃や家賃関数に関するこれまでの先行研究で得られている知見を整理する。

そのうえで、首都圏における約20万件の賃貸物件情報を用いて独自に家賃関数を計測することにより、地域区分の細分化や地域ダミーの採用、あるいは、関数形を工夫することが推計結果を改善するうえで果たして有効か否かを検証し、政府統計における推計方法改善の具体的方策を検討する。

3.分析結果の主要なポイント

利便性の高い地域に立地する小規模な借家借間の割高な家賃を他地域の持ち家に適用することは、持ち家の帰属家賃を過大評価する可能性がある。逆に、立地属性を厳密にコントロールせずに家賃関数を推計すると、小規模な借家借間の影響で規模に関して右下がりの単位家賃関数が得られ、これを規模の大きい持ち家に適用すると、持ち家の帰属家賃を過小評価する可能性がある。

首都圏における賃貸物件情報を用いた計測では、(1)地域を限定するだけでは、住宅の立地属性のコントロールは十分ではなく、(2)地域区分の細分化や地域ダミーの採用は、必ずしも推計結果を改善させず、逆に推計結果を悪化させる場合があり、(3)一方、関数形を工夫することにより、地域区分によらず、推計結果を大幅に改善できることが示される。

4.国民経済計算、県民経済計算等の推計方法への含意

国民経済計算における持ち家の帰属家賃の推計は、県民経済計算と整合性を保つためにも、全国一本でなく、都道府県ごとに行う必要があり、さらに、国民経済計算、県民経済計算とも、住宅を建築構造で区分して推計を行うことにより、産業連関表との差が縮小することが期待される。しかし、その場合もなお、持ち家の帰属家賃を過大評価する可能性がある。ただし、住宅属性を建築時期等によりさらに細分化するに際には、持ち家と貸家貸間の「質」の違いに十分に注意する必要がある。

全国消費実態調査では、規模が大きいほど家賃が割安になる家賃関数が計測され、持ち家の帰属家賃が過小評価されている可能性がある。住宅の立地属性をより詳細にコントロールするとともに、代替的な関数形の採用を検討する必要がある。

将来的には、住宅・土地統計調査の個票を利用して、全国消費実態調査のヘドニック推計が改善されることを前提として、他の統計はそれを共通のベンチマークとして採用することが望まれる。

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全文の構成

  1. (要旨)
  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 1ページ
    2.論文の構成
  4. 1ページ
    3.政府統計における持ち家の帰属家賃の比較
  5. 4ページ
    4.帰属家賃に関する先行研究
  6. 6ページ
    5.家賃関数に関する先行研究
  7. 8ページ
    6.地域区分と立地属性
  8. 13ページ
    7.政府統計における推計方法への含意
  9. 14ページ
    8.時系列の検証
  10. 17ページ
    9.政府統計における推計方法の改善策の提案
  11. 18ページ
    10.住宅の「質」について
  12. 19ページ
    11.おわりに
  13. 21ページ
    参考資料
  14. 24ページ
    参考文献
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