ESRI Discussion Paper Series No.149
証券取引法への課徴金導入はわが国の法体系を変えるか
-証券取引法・独占禁止法の課徴金を巡る法人処罰に関する意義と問題点-

2005年6月
  • 白石 賢(内閣府経済社会総合研究所特別研究員)

要旨

わが国では、最近、独占禁止法で課徴金額の引上げがなされ、また、証券取引法に課徴金制度が導入された。従来、課徴金は行政上の処分であり刑罰ではないとされてきた。これは独占禁止法に課徴金を導入する際に、二重処罰の問題を回避するため課徴金を制裁ではなく不当利得の返還としてとらえたことに由来する。しかし、今回の独占禁止法の課徴金の引上げに関する改正は課徴金の制裁色を強めるものであり、さらに、証券取引法の課徴金は明確に制裁として位置づけられると考えられる。これは、企業処罰に関しての日本のサンクションの序列体系を大きく変えるものであると考えられる(下表参照)。

課徴金が制裁として位置づけられることは、二重処罰との関係で問題がなくはないが、企業処罰に関しては、逆に、これを機に課徴金の位置づけを見直すべきであると考える。その方向性としては次のように言える。企業に対して、制裁的課徴金を課すことは、道徳性に重きが置かれないと考えられるので問題は少ない。また、課徴金の算定根拠が不明確となることは刑罰に近づきつつあることを容認することにもなる。そのため、企業に対する制裁的課徴金等を認めるなどは一つの立法的対応である。一方、現行法での、罰金との調整規定は課徴金の性格を曖昧にしている。さらに、個人に課徴金を課すことはデュー・プロセス等から問題がある。

(表) 課徴金の性格による比較
課徴金の性格 課徴金=不当利得の返還 課徴金=制裁 問題点等
サンクション体系 課徴金は行政処分と刑罰の間で行政処分に近い 課徴金は行政処分と刑罰の間で刑罰に近い
サンクションの性質 反道徳性、反社会性なし 反道徳性、反社会性あり 企業について道徳性は重きが置かれない
二重処罰 可能性小 可能性大 新設罰金との調整規定は二重処罰問題を逆に不明確化。課徴金の根拠が不明確化すると、単に、犯罪の悪性に対して罰を科すことになり、抑制のために一定金額を課すという色彩がなくなり、刑罰に近づく。
審判手続き 比較的緩やかでも可。実質証拠法則で補完 厳格であるべき 個人に課徴金を課す証取法ではデュー・プロセス上問題。証取法では実質証拠法則なし

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全文の構成

  1. (要旨)
  2. 1ページ
    はじめに
  3. 1ページ
    1.公法・私法の関係と権力性
  4. 2ページ
    2.刑罰と民事損害賠償
  5. 2ページ
    3.行政制裁と刑罰
  6. 4ページ
    4.サンクションの体系と立法実務
  7. 4ページ
    5.序列体系の変化
    1. 4ページ
      5-1独占禁止法の課徴金
    2. 7ページ
      5-2証券取引法
  8. 10ページ
    6.序列体系ゆらぎの要因
  9. 12ページ
    7.体系のゆらぎとしての課徴金の問題点
  10. 15ページ
    8.問題点の解消のための立法論
  11. 17ページ
    おわりに
  12. 19ページ
    (補論)出資法・利息制限法と環境関連法
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