ESRI Discussion Paper Series No.150
アジアの金融市場の統合はどこまで進んだか

2005年6月
  • 河越 正明((社)日本経済研究センター経済分析部主任研究員、内閣府経済社会総合研究所特別研究員)
  • 宮本 拓也(前(社)日本経済研究センター経済分析部中期班、現(株)四国電力経営企画部)
  • 鶴田 知己((社)日本経済研究センター経済分析部中期班)

要旨

1.問題設定・趣旨

本稿の目的は、実質金利平価のテストを通じて、日本とアジアの金融市場の統合の進展度合いを検討することである。

この分析には、まず、2000年代のアジア各国の金融市場を評価する意義があると考えられる。アジア各国の金融の自由化・国際化は、紆余曲折を経て進めてられてきた。1990年代後半のアジア危機を経て、2000年代には資本輸出国に変化する中で、アジアの金融市場がどのように世界の市場とリンクしているのかを検討するのは意義深い。

さらに、最近日本とアジアの相互依存関係の深まりを背景に、アジア共通通貨(アジア通貨統合)を構想する政策提言が現れている。このような政策提言に関係して、分析的な基礎を提供する意義もあると考えられる。

2.手法

1980年代から2003年までの短期金利を用いて、アジア8ヶ国(インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、台湾、中国)と日本の間で実質金利平価が成立するかテストした。具体的には、実質金利差がゼロから有意に乖離しているか、その構成要素(カバーなし金利平価、相対的な購買力平価)や期間別にまずテストした。

次に実質金利差が時間とともに縮小傾向にあるか、SURE推計によってテストした。さらに、そこで得られた結果が頑健なものであるかどうか、テストした。

3.結果

実質金利平価が成立するのは、シンガポールとの間だけであった。しかし5年刻みの期間別にみると、2000年代は1990年代前半と比べても平価が棄却される国の数が減少し、金融市場の統合が進んでいることがうかがえる。

さらに、平価からの乖離は縮小傾向にあることが、SURE推計によりわかった。しかも、その縮小のスピードは5ヶ国で同じであり、景気循環やカントリーリスクに係る変数を追加しても変わらない頑健な結果であった。これは各国間に何らかの共通要因が働いているためと解釈可能である。

4.今後の課題

どのような要因から、実質金利差が日本とアジア各国の間で、同じテンポで縮小していくのかを数量的に分析することが、今後の課題である。考えられる要因としては、例えば情報・通信技術の進歩による取引費用の低下や資本規制の緩和といった要因である。後者の要因については、資本規制の厳しさを数量化した指標を用いて検討を試みた。日本については、対象期間内で一貫して緩和されてきたことがわかるが、アジア各国については指標の作成方法の限界から、うまく動向を把握できていない。こうした点の解決が、今後の課題である。

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全文の構成

  1. 概要
  2. 1ページ
    目次
  3. 2ページ
    1 はじめに
  4. 3ページ
    2 先行研究とデータ
    1. 3ページ
      2.1 短期金利か長期金利か
    2. 4ページ
      2.2 データ
  5. 5ページ
    3 実質金利平価のテスト
    1. 5ページ
      3.1 通期でのテスト
    2. 6ページ
      3.2 期間別の検証
  6. 7ページ
    4 実質金利平価からの乖離の検討
    1. 7ページ
      4.1 実質金利平価差の検討
    2. 9ページ
      4.2 カバーなし金利差と相対的購買力平価
    3. 9ページ
      4.3 再検討
  7. 13ページ
    5 結び
  8. 14ページ
    参考文献
  9. 16ページ
    図表
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