ESRI Discussion Paper Series No.159
独禁法・証取法等行政処分の重罰化と立証責任・証明度のあり方について

2006年2月
  • 白石 賢(内閣府経済社会総合研究所主任研究官)
  • 山下 篤史(内閣府経済社会総合研究所研究官)

要旨

2006年1月から改正独占禁止法が施行され、課徴金の引き上げ等がなされるが、これはある意味では行政処分の重罰化が進むということである。しかし、課徴金賦課手続は行政審判であり、刑事訴訟手続ほど厳格な手続保障はなされていない。手続保障の違いから生ずる最大の問題点は行政審判と刑事裁判での立証水準の違いである。行政審判の立証水準は一般には民事裁判と同等のものとされる。そして、実際の運用上でも、その立証水準が刑事裁判のものより低い場合には、その低い立証水準で実質的な処罰が課されてしまうことになる。このため、行政審判においても立証水準を高くすべきという問題提起がなされる。他方、企業犯罪については、犯罪行為者側に多くの証拠が存在する事件が多くみられる。そのような場合に、高い立証水準が求められると処罰が不可能となるとの問題提起もなされている。

このような立証水準に対する相反する考え方に対しては、犯罪の軽重等に関する抽象的な議論からは、望ましい立証水準や手続規定を導き出すことはできない。犯罪抑止に向けた「効果」「効率性」という観点から、証明度・立証責任を一体としてコントロールしながら、被告側の権利と犯罪立証のバランスをとることが望まれる。このような考え方は、段階的証明度が使われている米国で、企業犯罪に対する方法として、刑事・民事・行政的制裁が一体的・並行的に使われている中でもみられる。

わが国でも、審判手続が立法裁量的に定められ・運用されている行政処分においては、このような考え方をすることも可能であり、そのためには、犯罪抑止のための「効果」「効率性」を実証する研究等が必要である。

本文のダウンロード

独禁法・証取法等行政処分の重罰化と立証責任・証明度のあり方について別ウィンドウで開きます。(PDF形式 758 KB)

全文の構成

  1. (要旨)
  2. 1ページ
    はじめに
  3. 1ページ
    1.行政処分手続の立法裁量性と処分結果
  4. 2ページ
    2.行政審判手続と処分結果
  5. 4ページ
    3.刑事訴訟手続・民事訴訟手続における証明度
  6. 6ページ
    4.証明度と立証責任の一体化とスペクトラム的思考
  7. 7ページ
    5.行政訴訟・行政処分手続における証明度・証明責任に関する学説
  8. 8ページ
    6.行政処分取消訴訟・行政審判の証明度・立証責任の運用
  9. 10ページ
    7.証明度に関する新たな議論
  10. 11ページ
    8.行政審判での証明度・立証水準はいかにあるべきか
  11. 13ページ
    9.犯罪の軽重と証明度
  12. 13ページ
    10.米国を中心とする法域での議論
    1. 14ページ
      10-1.犯罪の軽重と証明度
    2. 17ページ
      10-2.犯罪立証の困難さと証明度
    3. 18ページ
      10-3.刑事・民事没収手続改革-立証責任の逆転換と証明度
    4. 20ページ
      10-4.米国法の動きとわが国法への示唆
  13. 20ページ
    11.制裁システム上の効果・効率性
  14. 21ページ
    12.「効果」「効率性」に基づく手続論
  15. 24ページ
    おわりに
  16. 25ページ
    (補論1)「法と経済学」と証明度との関係について
  17. 27ページ
    (補論2) 犯罪捜査のための人的・能力的なエンフォースメント強化について
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)