ESRI Discussion Paper Series No.167
国民経済計算から見た日本経済の新動向

2006年7月
  • 土肥原 洋(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)
  • 増淵 勝彦(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
  • 丸山 雅章(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
  • 長谷川 秀司(内閣府経済社会総合研究所国民支出課長)

要旨

1.問題設定・趣旨

平成16年度の国民経済計算確報の推計に当たっては、毎年行われるデータの更新に加えて、5年ごとに実施される基準改定もあわせて行われ、推計精度の向上等が図られた。本稿では、確報・基準改定結果を踏まえて、日本経済の新しい動向を把握するために、近年特徴的な変化が見られる家計貯蓄率、財政収支、海外勘定、名目GDPの国際比較、デフレーターといった点について、観察事実の整理と要因の解明を行った。

2.手法

国民経済計算確報における諸勘定、付表のデータを中心に利用し、関連する個別の一次統計(家計調査等)、業務統計等を補完的に用いて、日本経済の全般的な動向の分析、家計貯蓄率、財政収支、海外勘定、名目GDPの国際比較、デフレーターに関する分析等を行った。

3.結論

家計貯蓄率は、今回の基準改定により2000年度以降大きく下方改定され、2004年度には2.7%まで低下した。これは主に、持ち家の帰属家賃以外の個人消費の上方改定、雇用者報酬の下方改定によるが、併せて、直近の低下の加速は、高齢化の進展によるところが大きい。家計貯蓄率については、今後、景気回復等の引き上げ要因も考えられるものの、引き続く高齢化が趨勢的な低下要因となることが予想される。

一般政府全体の財政収支(純貸出(+)/純借入(-))はバブル崩壊後急速に悪化し、特殊要因を除くベースでみると、財政赤字は2003年度まで拡大を続けた。しかし、財政赤字は2004年度には大幅に縮小した。1990年代の財政収支の悪化には、税収の減少、政府消費及び固定資本形成・土地購入(純)の増加に加え、社会保障の給付と負担の差額の拡大が寄与している。また、2004年度の財政収支の改善には、主として固定資本形成・土地購入(純)の減少、税収の増加が寄与している。

近年、対外純資産の蓄積等を背景に、利子・配当等の「海外からの所得の純受取」が大幅に増加しており、2005年には初めて「財貨純輸出」を上回ったと見られる。「海外からの所得の受取」の増加により、名目でみると、GNI(国民総所得)とGDP(国内総生産)の乖離が拡大している。ただし、実質では、「海外からの所得の受取」のほかに、原油価格高騰による交易条件の悪化を反映して減少した交易利得が加わるため、GNIとGDPの乖離はむしろ縮小している。

今回の改定値とOECDのデータによりOECD諸国の1人当たり名目GDPの国際比較を行うと、名目為替レート換算、購買力平価換算とも、日本やドイツ等の後退とアイルランドやアイスランド等の躍進が目立つ。欧州の経済規模の小さい国の躍進には、構造改革の成果に加え、EUの市場統合が広範な輸出市場を提供したことが寄与しているとみられる。

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  1. [要旨]別ウィンドウで開きます。(PDF形式 410 KB)
  2. 1ページ
    1.平成16年度国民経済計算確報・基準改定のポイント
    1. 1ページ
      1.1 確報及び基準改定
    2. 1ページ
      1.2 「国内総生産(支出側)」の動向
    3. 5ページ
      1.3 国民所得の動向
    4. 7ページ
      1.4 産業別GDP構成比の動向
    5. 10ページ
      1.5 所得支出勘定と資本調達勘定の主な動向
    6. 16ページ
      1.6 ストック統計の推移
    7. 17ページ
      1.7 1990年代半ば以降の日本経済の動向
  3. 19ページ
    2.家計貯蓄率別ウィンドウで開きます。(PDF形式 319 KB)
    1. 19ページ
      2.1 基準改定に伴う家計貯蓄率の低下要因
    2. 21ページ
      2.2 家計可処分所得の下方改定要因
    3. 23ページ
      2.3 家計貯蓄率の低下の加速要因
  4. 30ページ
    3.財政収支別ウィンドウで開きます。(PDF形式 473 KB)
    1. 30ページ
      3.1 一般政府全体の財政収支の動向
    2. 41ページ
      3.2 一般政府の部門別の財政収支の動向
  5. 49ページ
    4.海外勘定別ウィンドウで開きます。(PDF形式 417 KB)
    1. 50ページ
      4.1 近年の経常対外収支の動向
    2. 52ページ
      4.2 海外からの所得の純受取の増加の背景
    3. 55ページ
      4.3 海外からの所得の純受取とGNI
  6. 59ページ
    5.国際比較
    1. 59ページ
      5.1 1人当たり名目GDPの順位の変遷
    2. 62ページ
      5.2 順位変遷の背景・要因
  7. 66ページ
  8. 74ページ
    参考文献
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  • 電話 03-5253-2111(代表)