ESRI Discussion Paper Series No.168
EMUの16の経済メカニズムの検証
-One Market One Moneyから15年-

2006年7月
  • 高田 潔(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)

要旨

1.問題設定

本稿は、約15年前に欧州のEMU(経済通貨同盟)のプロセスが本格的に動き出したときに、その推進者はどのような考えでこれを進めようとしたのか、そして、それは実際にユーロが導入された後ではどうなっているか、という視点に基づいて、EMUの評価を考察した。

2.手法

本稿では、推進者の代表として欧州委員会が当時作成した報告書”One Market, One Money”(1990)で整理されたEMUの「16の経済メカニズム」について、現時点での検証を試みた。

3.結果

EMUの「16の経済メカニズム」は、為替レートの変動性・不安定性及び取引コストの除去、貿易や投資などへの効果の発現、国際通貨としてのユーロの役割向上など、一部効果が現れているものもあるが、まだ、効果がみられていないものも多い。

特に、EMUの成否の鍵となる重要な項目である、ECBの金融政策を中心とする「物価安定に関する影響」(項目2(メカニズム5からメカニズム7))と名目為替レートの調整手段の喪失の評価を中心とする「為替レート変動なしでの調整」(項目4(メカニズム11からメカニズム14))の項目は、経済メカニズムの効果が、まだ十分に現れていないと考えられる。また、ユーロ導入後EMU参加国で財政赤字が大幅に拡大し、「安定成長協定」が見直しを余儀なくされたことは、財政政策の調整の難しさを示している。

4.終わりに

全体としてみれば、「16の経済メカニズム」の効果は一部に現れているが、EMUが十分に機能しているとは言えないと考えられる。

また、「16の経済メカニズム」には対応しては整理できない大きな論点として、ユーロ圏全体としての経済成長が思わしくないことと、初期のユーロ安とその後のユーロ高というユーロの域外為替レートに対する大幅な変動も重要である。

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  1. [本文]別ウィンドウで開きます。(PDF形式 411 KB)
  2. [要旨]
  3. [概要]
  4. 5ページ
    1.はじめに
  5. 8ページ
    2.ユーロ導入後7年半のレビュー
    1. 8ページ
      2.1 ユーロ導入後の経済指標
    2. 9ページ
      2.2 ユーロ為替レートとECBの金融政策
  6. 11ページ
    3.EMUの「16の経済メカニズム」
    1. 11ページ
      3.1 効率性と成長に関する影響
    2. 12ページ
      3.2 物価安定に関する影響
    3. 13ページ
      3.3 公的ファイナンスに関する影響
    4. 14ページ
      3.4 為替レート変動なしでの調整
    5. 14ページ
      3.5 国際システムへの影響
  7. 16ページ
    4.「16の経済メカニズム」の検証(各論)
    1. 16ページ
      4.1 効率性と成長に関する影響の検証
    2. 18ページ
      4.2 物価安定に関する影響の検証
    3. 19ページ
      4.3 公的ファイナンスに関する影響の検証
    4. 20ページ
      4.4 為替レート変動なしでの調整の検証
    5. 22ページ
      4.5 国際システムへの影響の検証
  8. 24ページ
    5.「16の経済メカニズム」の検証(総論)
    1. 24ページ
      5.1 「16の経済メカニズム」の検証(総論)
    2. 25ページ
      5.2 「16の経済メカニズム」以外の論点
  9. 27ページ
    6.まとめ
  10. 28ページ
    補論
    1. 28ページ
      1.EMUが貿易に与える影響
    2. 31ページ
      2.ホームバイアスとEMUの影響
    3. 37ページ
      3.ユーロ圏のビジネスサイクルの収斂
  11. 40ページ
    参考文献
  12. 45ページ
    図表一覧別ウィンドウで開きます。(PDF形式 302 KB)
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