ESRI Discussion Paper Series No.169
日本における転職コストの趨勢:1991~2002年

2006年10月
Michael Bognanno
(Associate Professor of Economics, Temple University - Department of Economics)
神林
(一橋大学経済研究所助教授)

要旨

1990年代は日本の労働市場に大きな変化が発生したと考えられている時代である。実際、完全失業率は高水準を推移し、さまざまな賃金制度改革も行われたといわれている。本論文では、転職コストという観点から、1990年代の日本の労働市場が被った変化を観察した。具体的には、厚生労働省『雇用動向調査』の個票を用いて、各年毎に、どのような属性をもった労働者の転職がうまくいったのか(転職時の賃金減少が少ないか)を計測した。この計測結果を相互に比較することで、1990年代の転職労働市場に変化が生じたかどうかを検討した。

その結果は以下のとおりである。観察期間中、転職コストは転職時の年齢が高くなるにつれて大きくなった。また、企業規模や産業を移動することで生じる転職コストは消失する傾向が観察され、日本の労働市場の特徴といわれてきた人的資本の(企業・産業)特殊性が失われつつある可能性を示している。ただし、産業間の移動によって生じるコストは減少しつつあるものの、職種をまたがる移動によって生じるコストは上昇する傾向にある。また、予想されたように、高年齢層・大企業勤務経験者が転職するときの賃金減少確率は(ほかの転職者と比較して)高い。また、同じ高年齢者でも、使用者側の理由で転職した労働者のほうが、本人の個人的な理由で転職した労働者よりも大きなコストを負担する傾向があった。男女差に関しては、若年層では女性のほうが男性よりも転職コストは高いが、高年齢層では逆に女性のほうが転職コストは低い。したがって、転職市場全体をみたときには、男女差はあまり観察されない。

以上のように、従来日本に特徴的だった企業規模・産業をまたぐことの大きなコストが、1990年代には時系列的に減少しており、本論文では同時期の日本の労働市場が重大な変化を被った可能性が示されている。

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全文の構成

  1. Abstract
  2. 3ページ
    1 Introduction
  3. 7ページ
    2 Employment Trend Survey Microdata: 1991-2002
  4. 10ページ
    3 Factors Influencing Job Change Costs: Empirical Estimates
  5. 13ページ
    4 Conclusion
  6. 15ページ
    5 References
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