ESRI Discussion Paper Series No.171
日本の所得再分配―国際比較でみたその特徴

2006年12月
  • 太田 清((株)日本総合研究所主席研究員、内閣府経済社会総合研究所特別研究員)

要旨

問題意識

経済協力開発機構(OECD)が2005年に出した各国の所得格差に関する分析や、2006年の「対日経済審査報告」では、日本は政府による(税、社会保障による)再分配の前の所得では比較的平等な方であること、しかし、再分配が小さいために、再分配後の可処分所得では不平等な方になっていることを指摘している。また、特に労働年齢層(現役世代)の低所得層に対する再分配が小さいことを指摘している。

本論文では、日本での再分配の状況に関し、OECDの報告では明らかでないいくつかの点について分析を行い、具体的に再分配のどの部分が他国に比べて小さいのか等を探ってみた。

分析方法

再分配を構成する税、社会保障負担、社会保障給付それぞれについて、日本と各国の状況(負担率、ジニ係数の変化等)を比較した。特に、OECDの報告において日本が比較的高いとされている相対的貧困率は、その定義上、中央値に近い層と低所得者層との差に関わるものであるから、税率等について中央値所得の場合と低所得の場合とを直接比較した。データとしては、OECDが日本について使用している「国民生活基礎調査」の税、社会保険料等の数値と、再分配に関する既存研究等を基に算出した各国の数値とを比較した。また、少子化対策としても関心が高まっている家族給付支出(これは日本は極めて小さい)の再分配効果についてもみてみた。

分析結果

日本では欧米諸国と比較して、

  • (1)再分配が小さいが、そのことには、社会保障給付のうち労働年齢層への給付が小さいほか、税による再分配が小さいことも量的にはかなり寄与している。特に中間層と低所得層の税率の差が小さいことが、相対的貧困率を高くする方向に影響している。
  • (2)労働年齢層への社会保障給付が小さい中で、昨今、少子化対策としても注目されている家族政策支出等が小さいことが、特に子供のいる世帯の相対的貧困率を高めにしている可能性があることが示唆された。

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全文の構成

  1. [要旨]
  2. 3ページ
    1.はじめに
  3. 5ページ
    2.OECDの報告の概要
  4. 5ページ
    3.税、社会保障負担に関する分析
    1. 5ページ
      3-1 OECDの報告で明らかでないこと
      1. 5ページ
        (負担と給付の内訳)
      2. 6ページ
        (負担のうち税と社会保障負担の内訳)
      3. 6ページ
        (税等の負担と相対的貧困率の関係)
    2. 7ページ
      3-2 税・社会保障負担の再分配効果(ジニ係数低下効果、相対的貧困率低下効果)
      1. 7ページ
        (ジニ係数低下効果)
      2. 8ページ
        (所得階層別の負担率と相対的貧困率低下効果)
  5. 9ページ
    4.社会的支出(Social Spending)(家族関係給付等)に関する分析
    1. 9ページ
      4-1 OECDの報告で明らかでないこと
    2. 9ページ
      4-2 家族給付支出の再分配効果
  6. 10ページ
    5.結論
  7. 11ページ
    参考文献
  8. 14ページ
    付論 OECDが用いている統計の再分配についての検討
  9. 17ページ
    図表一覧
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