ESRI Discussion Paper Series No.174
昭和恐慌からの回復に対する貸出と資本市場の寄与

2007年1月
  • 原田 泰(株式会社大和総研チーフエコノミスト)
  • 鈴木 久美(早稲田大学政治経済学術院政治経済学部研究助手)

要旨

1.問題設定

昭和恐慌期前後には多くの銀行が破綻し、それが恐慌を悪化させた重要な要因であったとされている。しかし、昭和恐慌期を含むこの時期においても、資本市場における資金調達は拡大し、特に社債の増加が著しかった。すなわち、昭和恐慌期の後に、民間部門の資金調達手段が、銀行中心の間接金融システムから資本市場を中心とした直接金融システムに移行している。要するに、昭和恐慌期前後においては、企業がその回復と成長の原資を銀行に依存していたか、資本市場に依存していたかについては対立する議論がある。本稿は、この対立する議論に決着を付けようとするものである。

2.手法

一般に、銀行貸出が生産に影響を与えるのは、銀行が企業の経営状況について特別な知識を有し、それは株や社債などの債券では代替できない、ないしは代替に大きな制約があるという前提にたっている。そこで、昭和恐慌期前後の企業が、その回復と成長を、どのように調達したかが重要となる。

本論文では、昭和恐慌期前後の大企業の産業別データを利用し、成長が銀行貸出によってなされたものか、それとも資本市場からの資金調達によってなされたものかを計量的に分析する。

3.結果

分析の結果、固定資産の増大と銀行貸出(企業にとっては借入)の増加との相関は弱く、資本金、社債などとの相関が強い。すなわち、昭和恐慌前後期の企業の回復と成長を支えたのは、銀行ではなくて、資本市場であったことがわかった。

4.終わりに

本稿の分析結果は、銀行機能の低下が経済に影響を与える程度は限られており、昭和恐慌からの脱却の時期において、資本市場からの資金調達の貢献が大きかったことを示している。

このことの現代的意義は大きい。90年代以降の経済停滞において、銀行機能低下が重大な問題とされてきたが、銀行機能の回復ではなくて、資本市場からの調達によって、資金需要に対応することが可能ということを示唆するからである。

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全文の構成

  1. 5ページ
    I. はじめに
  2. 6ページ
    II. 銀行の機能低下はなぜ経済を悪化させるのか
  3. 7ページ
    III. 戦前期の資金調達構造
    1. 7ページ
      1.データの説明
    2. 7ページ
      2.総資金データの動き
    3. 9ページ
      3.大企業データの動き
    4. 12ページ
      4.総資金調達データと大企業データの違い
  4. 13ページ
    IV. 産業別データによる実証分析
    1. 13ページ
      1.データの説明
    2. 14ページ
      2.記述統計
    3. 15ページ
      3.産業ごとの推計結果
    4. 18ページ
      4.パネルデータ推計
  5. 20ページ
    V. 結論
  6. 21ページ
    参考文献
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