ESRI Discussion Paper Series No.177
巨大災害による経済被害をどう見るか
- 阪神・淡路大震災、9/11テロ、ハリケーン・カトリーナを例として -

2007年4月
  • 上野山 智也(内閣府経済社会総合研究所 主任研究官)
  • 荒井 信幸(広島大学大学院社会科学研究科 客員教授(前内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官(前大臣官房審議官))

要旨

1. 問題設定

災害被害の軽減は国の重要課題となっているが、その前段階として現実に巨大災害が起こった場合にどのような経済被害が発生したのかを知る必要がある。経済被害の推計は、行政、研究者、シンクタンクなどが行ってきたが、同じ災害でも、何をもって損失と考えるのか(定義)、いつまで、どこまでを対象とするか(時間的・空間的範囲)などにより、金額が異なる。今後、災害被害や災害リスクの軽減施策を考える上で、こうした問題を整理しておくことが重要である。

2. 考察方法

阪神・淡路大震災、ニューヨーク・テロ(9/11テロ)、ハリケーン・カトリーナの、3つの異種の災害について、各主体が算出した被害額と推計方法をベースとする。考察に当っては被害額を直接被害(ストック)と間接被害(フロー)に分け、定義、時間的・空間的範囲、評価方法について、できるだけ比較可能なように整理して考察する。

3. 結論

巨大災害がもたらす経済被害額のうち、災害発生直後の瞬間的な直接被害額については、被災地の自治体を空間的範囲とし、主として再取得価格が用いられるなど、各推計による違いは少ない。これは、災害の直接被害額が災害復旧のための予算措置や保険金支払いの基礎情報としての性格を持っているためと考えられる。これに対し災害による経済活動低下などの間接被害額については、災害別にも同じ災害に対しても、空間的、時間的範囲や推計方法に大きな幅がある。この背景には、技術的な困難さと共に災害の複雑な波及結果である間接被害額をどこまで、何のために推計するかが、それほど自明ではなかったことがあると考えられる。

巨大災害がもたらす経済被害を予防する投資の便益評価や、災害復旧の優先順位など考える場合、間接被害の大きさは重要な考慮事項となる。間接被害の推計にはデータ制約や方法ごとの得失もあって、一律の基準を当てはめることは困難だが、間接被害推計のための方法論やデータの蓄積を今後さらに進めて行くことが重要である。

全文ダウンロード

項目別ダウンロード(全2ファイル)

  1. [本文]別ウィンドウで開きます。(PDF形式 454 KB)
  2. 3ページ
    1 はじめに
  3. 3ページ
    1-1 目的
  4. 3ページ
    1-2 経済被害としての直接、間接被害の一般的な考え方について
  5. 4ページ
    2 阪神・淡路大震災の経済被害額推計
  6. 4ページ
    2-1 阪神・淡路大震災の概要
  7. 5ページ
    2-2 兵庫県の被害額推計(1995年4月5日)
  8. 6ページ
    2-3 豊田・河内の被害額推計(1997年)
  9. 6ページ
    2-4 阪神・淡路大震災調査報告編集委員会の被害額推計(1998年11月30日)
  10. 7ページ
    3 9/11テロの経済被害額推計について
  11. 7ページ
    3-1 9/11テロの概要
  12. 8ページ
    3-2 ニューヨーク市の被害額推計(2002年9月14日)
  13. 9ページ
    3-3 ニューヨーク連邦準備銀行の被害額推計(2002年11月)
  14. 10ページ
    3-4 APEC Economic Outlookの被害額推計(2005年10月)
  15. 11ページ
    4 ハリケーン・カトリーナ(+リタ)17災害の経済被害額推計について
  16. 11ページ
    4-1 ハリケーン・カトリーナ(+リタ)災害の概要
  17. 11ページ
    4-2 RMSの被害額推計(2005年9月9日)
  18. 12ページ
    4-3 CBOの被害額推計(2005年10月6日)
  19. 13ページ
    4-4 BEAの被害額推計(2005年12月21日)
  20. 13ページ
    5 巨大災害の経済被害額推計のとらえ方について
  21. 13ページ
    5-1 被害額の推計主体と目的について
  22. 14ページ
    5-2 空間的な範囲について
  23. 14ページ
    5-3 直接被害(ストック)およびその評価方法について
  24. 15ページ
    5-4 間接被害(フロー)とその推計期間について
  25. 16ページ
    6 まとめ
  26. 17ページ
    参考文献
  27. 19ページ
    図表別ウィンドウで開きます。(PDF形式 216 KB)
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)