ESRI Discussion Paper Series No.187
昭和恐慌期のマネーはベースマネーでコントロールできたのか

2007年7月
  • 原田 泰(株式会社 大和総研チーフエコノミスト)
  • 佐藤 綾野(新潟産業大学専任講師)

要旨

日本における大恐慌、すなわち昭和恐慌は、他の国々に比較すれば、軽微なものに終わった。昭和恐慌が「軽微」に終わった理由として、様々な議論があるが、原田・佐藤・中澤[2007]は金融政策であるという結論を導き出している。原田・佐藤・中澤の論文では金融政策変数としてM2を用いている。しかし、M2は、金融政策当局が目標とすることはできるが、直接コントロールすることはできない。すなわち、M2をどのようにコントロールできるのかが重要な問題となる。 そこで、信用乗数に焦点を当て、部分調整モデルによって、その動きを説明することを試みたが、理論と適合する結果はえられなかった。しかし、信用乗数が安定した変数であることは確認できた。

このことに着目して、ベースマネーを伸ばすことによってM2を安定的に伸ばすことが可能であるかどうかを分析した。結果は、ベースマネーの増大によってM2が増大し、その関係は安定的であるとなった。本稿の分散分解によれば、M2の変動の35%がベースマネーで説明できるという結果になり、ベースマネーのM2に与える影響は数量的にも大きかった。M2の増大によって名目IIPも上昇することになるだろう。

以上の結果は、デフレの深刻な昭和恐慌においても、ベースマネーの増大によって、景気回復が可能であり、また、現実にベースマネーの増大もあって景気が回復したことを示している。

参考文献原田泰・佐藤綾野・中澤正彦「昭和恐慌期の財政政策と金融政策はどちらが重要だったか?」 ESRI Discussion Paper Series No.176, 2007年3月、内閣府経済社会総合研究所

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全文の構成

  1. 目次
  2. 1ページ
    昭和恐慌期のマネーはベースマネーでコントロールできたのか
  3. 2ページ
    Could Money in the Showa Depression Era Be Controlled by Base Money?
  4. 3ページ
    1. はじめに
  5. 4ページ
    2. 信用乗数の動向
  6. 5ページ
    3. 信用乗数の変動要因
  7. 6ページ
    4. 信用乗数の説明モデル
  8. 9ページ
    5.マネーサプライの制御可能性
  9. 11ページ
    6. おわりに
  10. 12ページ
    参考文献
  11. 14ページ
    図表
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