ESRI Discussion Paper Series No.195
「サービスアウトプットの評価にかんする一試論」

2008年6月
  • 中島 隆信(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)

要旨

サービス業の生産性を向上させることが緊急課題といわれるようになって久しいが、その前に必要なことはサービス業のアウトプットをどう定義し、どう計測するかという基本的な問題の解決である。生産と消費に同時性があるサービスの場合、消費者が購入するサービスをどう評価しているかがアウトプット定義の鍵になる。そこで有用となるのが価格情報である。規制のないマーケットでは、価格は消費者の評価を反映していると考えられる。ここでの問題は消費者評価の向上がサービス自体の質向上によるものではなく、外部の環境変化によってもたらされる場合の扱いである。たとえば、東京・大阪間の移動価値が現在と30年前とで同じとは思えない。マーケットが拡大し、ビジネスチャンスが広がれば同じ移動サービスでもその価値は高まる。そうした消費者評価の向上による需要曲線のシフトがその間の料金上昇の背景にあると考えてもおかしくはない。

本稿ではこうした問題意識に基づき、Hayashi(1985)による耐久財としてのサービスの考え方とDiewert-Wykoff(2007)の投資財価格モデルを用い、サービスの価格変化から消費者評価の向上による需要曲線のシフトの貢献分を抽出し、それをアウトプットの変化として加味することの合理性とそのための簡単な方法論を提示し、迷走するサービスアウトプットの評価の議論に一石を投じることを目的とするものである。結果は以下のようにまとめられる。

  • 1970年から2004年までの理美容サービスの価格上昇率は5.6%である。その間の総合物価の伸びは3.3%であるため、その差である2.3%はDiewert-Wykoff(2007)のいう実質価格上昇率であり、その中に消費者評価の向上が含まれている。
  • 実質価格上昇率から抽出される消費者評価の向上の貢献分は、需要曲線と供給曲線に単純な対数線形の仮定をおき、各種弾力性や技術進歩率など他の補助情報を得ることにより比較的簡単に求められる。
  • 外部環境の変化による消費者評価の変化が生じている場合、単純なヘドニック法では生産性指標に深刻な影響を与える。本稿で行ったシミュレーションによれば、消費者評価の向上によって価格が上昇すると、消費者評価を加味したアウトプット定義では生産性の上昇が見いだされるのに対し、ヘドニック法では逆に生産性の下落として計測される。

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全文の構成

  1. 1ページ
    1. はじめに
  2. 3ページ
    2. 理論的フレームワーク
  3. 6ページ
    3. 医療サービスへの適用事例
  4. 8ページ
    4. アウトプット伸び率の計算法
  5. 11ページ
    5. ヘドニック法の問題点
  6. 13ページ
    6. 結び
  7. 15ページ
    参考文献
  8. 17ページ
    Nakajima(2007)でのBertrand 型モデルについての補論
  9. 18ページ
    ヘドニック推計についての補論
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