ESRI Discussion Paper Series No.208
雇用創出・消失と労働流出入の関係について

2009年3月
  • 照山 博司(京都大学経済研究所教授)
  • 玄田 有史(東京大学社会科学研究所教授)

要旨

本稿では、厚生労働省「雇用動向調査」の個票データを用いて、1997年から2005年までの個別事業所レベルでの雇用変動と労働移動の関係を考察した。その主な結果は、次の通りである。

  • 存続事業所への労働者の流入と流出の大部分は,採用と離職という外部労働市場を通じた移動であった。2000年以降,労働流入,流出ともに拡大する傾向を示す。この期間,雇用創出は安定し,雇用消失は縮小していた。したがって,労働流入出の拡大は,労働流入-雇用創出(=労働流出-雇用消失)で示される存続する雇用機会間の労働移動が高まったことが原因であったことがわかる。
  • 事業所開設による雇用創出の変動は、事業所廃止による雇用消失の変動よりも大きい。また、存続事業所への労働流入(採用)が高まる時期には、事業所開設による労働流入(採用)も同時に高まる傾向がある。存続事業所では、労働流出(離職)と共に労働流入(採用)も同時に高まるが、そのような時期には事業所廃止がもたらす労働流出(離職)は縮小する傾向にある。これらの要因で、事業所の開廃効果まで含めると、労働流入(採用)は労働流出(離職)より大きく変動することになる。
  • 存続事業所に関する労働流入出を企業規模別に見た場合,大規模企業でも中小規模企業と変わらないほどの労働流入出(採用・離職)が観測される。大規模企業では1990年代末以降に採用・離職が趨勢的に高まり,最近では中小規模企業とほぼ同水準となっている。とくに,大規模企業でみられる2002年以降の労働流入(採用)の増加が、全体でみた場合の労働流入(採用)増の源泉となっている。
  • 存続事業所に関する労働流入出(採用・離職)を産業別に見た場合,卸売・小売業、サービス業、製造業の貢献が大きく,この3産業で,労働流入・労働流出とも、7割から8割を占める。なかでも,卸売・小売業での労働流入出(採用・離職)がもっとも多く,2000年代にさらに上昇しつつある。
  • 事業所ごとのデータを分析すると,事業所の雇用創出(消失)の拡大には,主に採用(離職)増で対応し,離職(採用)減が果たす役割は大きくないことが示唆される。また,事業所の雇用創出,消失の程度にかかわらず,採用が多い事業所は離職も多いという関係が見出される。

本文のダウンロード

雇用創出・消失と労働流出入の関係について別ウィンドウで開きます。(PDF形式 414 KB)

全文の構成

  1. 1ページ
    1. はじめに
  2. 1ページ
    2 変数の定義
  3. 2ページ
    3 長期にわたる動向
  4. 3ページ
    4 企業規模と労働流入出
  5. 4ページ
    5 産業分類と労働流入出
  6. 4ページ
    6 ミクロ的にみた労働流入出
  7. 6ページ
    7 主な分析結果の要約
  8. 7ページ
    補節
  9. 8ページ
    参考文献
  10. 9ページ
    図1
  11. 10ページ
    図2
  12. 11ページ
    図3
  13. 12ページ
    図4
  14. 13ページ
    図5
  15. 14ページ
    図6
  16. 15ページ
    補節図1
  17. 16ページ
    補節図2
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)