ESRI Discussion Paper Series No.218
設備投資分析の潮流と日本経済
-過剰投資か過少投資か-

2009年6月
  • 宮川 努(学習院大学経済学部教授)
  • 田中 賢治(日本政策投資銀行経済調査室課長(前 内閣府経済社会総合研究所主任研究官))

要旨

日本の設備投資は1990 年代以降伸びが低下したが,国際比較の観点からは設備投資の水準は必ずしも低くなく,設備投資動向の判断はどちらの視点でどの時期を考えるかによって異なる.80 年代以降の設備投資の実証分析はTobin のQ 理論を中心に展開されてきたが,それに流動性制約や不確実性の影響を考慮することによって,設備投資が過小となる可能性が指摘されてきた.しかし,不確実性や不可逆性を踏まえると,企業が設備投資を手控えた後一気に設備投資を実行した場合には断続性が生じ,設備投資に大きな山(investmentspike)が生まれる可能性がある.また,IT のような革新的技術による誘発や企業の「横並び」行動によってもinvestment spike は起こり得る.こうした横並び行動は必ずしも合理的な判断に基づく行動とは言えず,その結果,過剰投資が生じる可能性もある.そこで,investment spike の要因についてプロビット推計の手法で実証分析したところ,横並び行動の影響が示唆される結果が得られた.設備投資行動の同調性は,特にバブル崩壊前まで強く,そのために変動も大きく,景気全体の変動に大きな影響を与えていたが,近年はこうした同調性が薄れ,むしろキャッシュ・フローの影響力が強くなっている.

全文ダウンロード

設備投資分析の潮流と日本経済-過剰投資か過少投資か-別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.3 MB)

項目別ダウンロード(全4ファイル)

  1. 本文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 469 KB)
  2. 3ページ
    1.日本経済における設備投資の重要性
  3. 5ページ
    2.設備投資行動の実証分析と日本経済
    1. 5ページ
      2.1 Tobin のQ 理論と日本企業の設備投資行動
    2. 6ページ
      2.2 流動性制約,担保制約と設備投資行動
    3. 8ページ
      2.3 不確実性,不可逆性と設備投資
    4. 9ページ
      2.4 企業の異質性とinvestment spike
    5. 10ページ
      2.5 設備投資の連動性と過剰設備
  4. 12ページ
  5. 13ページ
    4.Investment spike の決定要因
    1. 13ページ
      4.1 Investment spike の特定化
    2. 14ページ
      4.2 Investment spike は何故生じるか
  6. 18ページ
    5.今後の設備投資分析の課題
  7. 20ページ
    補論 推計用データの作成方法
    1. 20ページ
      1.実質資本ストック(K)
    2. 21ページ
      2.Tobin のQ(aq)
    3. 21ページ
      3.キャッシュフロー対資本ストック比率(cf)
    4. 21ページ
      4.借入残高対総資産比率(debt)
    5. 21ページ
      5.3 大株主持ち株比率(kabu)
    6. 21ページ
      6.相対的TFP(rtfp)
    7. 22ページ
      7.産業内のinvestment spike 発生比率(aisrate, risrate, cisrate)
    8. 22ページ
      8.産業別実質為替レート変化率(ex)
    9. 22ページ
      9.産業別規制指標(reg)
    10. 22ページ
      10.産業別の不確実性(uncer)
    11. 23ページ
      参考文献別ウィンドウで開きます。(PDF形式 418 KB)
    12. 28ページ
    13. 29ページ
      図表2-1 設備投資/GDP比率の国際比較
    14. 30ページ
      図表2-2 設備投資/資本ストック比率の国際比較
    15. 31ページ
      図表2-3 資本係数の国際比較
    16. 32ページ
      図表3 設備投資比率の変動
    17. 33ページ
      図表4 IT投資/全投資比率の推移
    18. 34ページ
      図表5-1 日本の有形資産投資と無形資産投資
    19. 35ページ
      図表5-2 米国の有形資産投資と無形資産投資
    20. 36ページ
      図表6 主な産業の設備投資の要因分解
    21. 37ページ
      図表7 investment spikeの社数割合
    22. 38ページ
      図表8 investment spikeの影響度
    23. 39ページ
      図表9 基本統計量
    24. 40ページ
      図表10 推計結果(全産業μ=0.2, λ=1.75)
    25. 41ページ
      図表11 推計結果(製造業μ=0.2, λ=1.75)
    26. 42ページ
      図表12 推計結果(非製造業μ=0.2, λ=1.75)
    27. 43ページ
      図表13 推計結果(全産業μ=0.3, λ=2.5)
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)