ESRI Discussion Paper Series No.220
2025 年の世界経済と中国経済
(中国の経済政策は現状維持可能か?)

2009年7月
広瀬哲樹
(内閣府経済社会総合研究所 顧問)

要旨

中国・インドという「人口大国」が工業化し、グローバル化することは、歴史的変化をもたらす可能性を秘めている。こうした21世紀の趨勢の下で、中国等の四半世紀後を展望するには、非直線的、非連続的変化を考慮に加える必要があることを意味していることになる。最近5年をとっても、大規模な検討が4つ行われている。これらでは、中国等の重要性が今後も増し続けるであろうこと、今後20年、高度成長が持続すると想定する一方、グローバルな輸出・輸入構造を正確に考慮していなかったり、先進国の反応を想定していなかったりなど楽観論と呼ばれかねない要素が基本にある。

本論文では、過去の中国等「人口大国」の経済発展が可能となった要因を抽出し、これが21世紀の趨勢の中でどのような環境変化に直面するかを新たに生産・貿易・技術の要因を明示的に考慮して評価する。課題としては、中国等の高度成長を可能としてきた輸出主導の発展政策が21世紀でも最適政策と言えるのかどうか、諸外国への影響とその反応を考慮した場合、どのようなリパーカッションがあり得るのか、中国国内、諸外国の反応も考慮に入れた場合、どのような政策の枠組みがより望ましいのかを分析する。

第1章では、本論文の分析の視点を整理し、第2章では、中国を中心とした「人口大国」の発展要因を持続性の観点から検討する。第3章では、2025年を3つのシナリオに基づき展望する。第4章で、政策選択を含む将来への課題と対応を検討する。

本論文の主な分析の結果では、これまで中国等の発展政策を成功させてきた輸出主導の政策が国内経済厚生やバランスの点、国際的な影響の点からも行き詰る可能性の高いことが明らかになる。もし、国際的にネガティブな反応に遭遇すると中国が最も厳しい結果に直面することも指摘する。これを回避するには、内需主導の効率性向上重視の政策に移行することが重要で、中国自身にも、また、国際的にもより望ましい政策選択となりうることを導出する。

これらの分析は、将来の不確実性、特に、現状の直線的延長では解析できないことから、シナリオ分析の手法とグローバルな貿易・生産均衡モデルを組み合わせて用いている。このため、これまでの研究と比較して世界の相互依存関係を明示的に捕らえることに成功している。しかしながら、シナリオの想定と実態経済との関係には様々な可能性が残されており、ここで示されたシナリオが唯一のものとは言えない。様々な可能性をより絞り込む研究は、今後の課題として残されている。

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  2. 1ページ
    はじめに --- 論文の問題提起
  3. 3ページ
    第1章 四半世紀後の世界で中国はなぜ重要か
    1. 3ページ
      1 世界における中国の位置づけのレビュー
    2. 4ページ
      2 成長要因の概観
    3. 7ページ
      3 成長の持続可能性と中国の重要性
  4. 9ページ
    第2章 10数年の成果とその持続可能性
    1. 9ページ
      1 分析の枠組み
    2. 9ページ
      2 過去10年の変化とその要因
    3. 13ページ
      3 展望と検討課題
    4. 15ページ
      4 検討する政策選択肢
  5. 18ページ
    第3章 3つのシナリオ
    1. 18ページ
      1 世界経済の長期展望
    2. 20ページ
      2 シナリオ1:“趨勢維持”ケースと分析課題の概要
    3. 23ページ
      3 シナリオ2:“輸出主導崩壊”ケースと分析の概要
    4. 25ページ
      4 シナリオ3:“効率重視”ケースと分析の概要
  6. 28ページ
    第4章 将来に向けた政策の選択
    1. 28ページ
      1 2025年の世界経済とは
    2. 33ページ
      2 貿易と経済発展のネクサス
    3. 35ページ
      3 将来の中心課題と政策の選択
  7. 39ページ
    おわりに
  8. 42ページ
    図表別ウィンドウで開きます。(PDF形式 309 KB)
  9. 54ページ
    参考文献
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