ESRI Discussion Paper Series No.226
増え続ける米国人口とその要因:
人種・エスニシティ・宗教における多様性

2009年11月
  • 是川 夕(内閣府経済社会総合研究所 特別研究員)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部第3室長)

要旨

米国の総人口は2006年10月に3億人を突破し,人口増加のペースが依然として衰えていないことを示した。本稿では,多くの先進国が人口置き換え水準を大幅に下回る出生力低下を経験し,人口減少局面に突入,あるいは減少を目前にしているさなか,なぜ,米国だけが例外的に人口増加を続けるのかといった疑問に答えを出すべくことを目的とする。特に、米国における主に1990年代以降の人口動態の特徴を出生、死亡,移動についてそれぞれ検討した。補論では、カナダと米国の比較を論じている。

米国の人口動態は他の先進諸国と比較して「例外的」とされることが多い。しかし米国人が平均的に特異であるというのではなく,人口動態行動を異にする多様な集団が存在する結果であることを理解する必要がある。例えば、米国の合計出生率は,戦後,18年間という非常に長期にわたるベビーブームを経験した後低下局面を迎えたものの,90年代以降は人口置換水準前後で安定的に推移している。他の先進国と比較して高いこうした出生力の背景には,一部の人種・エスニシティ,宗教人口における著しく高い出生力および,米国特有の柔軟かつ適応的な社会のしくみが深く関わっている。また,米国の死亡率が他の先進諸国と比較して高いことも,出生力と同様,人口集団間で死亡率に格差があることが背景にある。これらに加えて,米国は年間100万人程度の移民を受け入れている。移民は再生産年齢の途上にある若年層が多く出生力も高い。したがって,人口の再生産に大きく貢献する結果となっている。

今後の米国は,単に人口が増えるだけでなく,人口構造にも変化をもたらすことが予想されるが,サブグループ間で行動の格差が縮小する側面がある一方で,より格差が顕著になる側面も存在し,その方向性については,むしろ不確実性が高まっている。

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全文の構成

  1. 3ページ
    1. はじめに
  2. 4ページ
    2. 高い出生力とその要因
    1. 4ページ
      2.1 出生力転換と長いベビーブーム,そしてベビーバストへ
    2. 6ページ
      2.2 1980 年代の合計出生率の再上昇から90 年代の安定期へ
    3. 7ページ
      2.3 高い出生力とその要因
  3. 14ページ
    3. 死亡率の動向
    1. 14ページ
      3.1 乳幼児死亡率
    2. 15ページ
      3.2 成人期における死亡率格差
    3. 16ページ
      3.3 その他の危険要因(喫煙,肥満等)
  4. 17ページ
    4. 移民の動向
  5. 19ページ
    5. 米国の人口の今後
    1. 19ページ
      5.1 将来人口推計にみる構造変化
    2. 19ページ
      5.2 高齢化問題と地域構造の転換
  6. 21ページ
    6. 結論
  7. 23ページ
    補論・カナダの人口動態
  8. 27ページ
    [参考文献]
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