ESRI Discussion Paper Series No.228
「人口大国」の経済成長と世界経済に与えた影響

2009年12月
  • 松谷 萬太郎(内閣府経済社会総合研究所特別研究員)

要旨

最近の20年は、グローバル化の機運が一気に高まり、インドや中国のように10億人を越える人口を持つ「人口大国※」が工業化し、世界経済に影響を与えるようになった。

本論文では、過去の中国等「人口大国」の経済成長により生じた主要な議論、第1は、そもそも「人口大国」が主にどのような要因で高い経済成長を実現したのか、第2は、「人口大国」がグローバルなインパクトを与えた結果、既存の先進国の経済にいかなる影響を与えたか、を分析課題とする。ここでは、この2点に経済学的な側面から焦点をあて、グローバルな問題として数量的に分析する。

第1章では、本論文の分析の視点を整理し、第2章では、その分析の枠組み、第3章以下では、中国を中心とした「人口大国」の発展要因や先進国への影響を数量的に検討する。

本論文の主な分析の結果では、これまでの「人口大国」の経済発展の要因としては、技術進歩の寄与が特に大きいこと、また先進国経済にプラスの影響を生産、消費両面から与えたが、分析の対象とした1990年代では、数量的にみれば大きくないことが明らかになる。更に政策的含意としては、各国経済が柔軟な対応能力を持ち続けることが極めて重要であることを指摘する。例えば、賃金等が硬直的であれば、先進国は「人口大国」の経済成長から得ていた利益を失うことになる試算を示す。


(※「人口大国」は、厳密には本文のp3で定義が行われるが、経済学的な観点から言えば、例えば、「人口大国とは、大規模な労働力があたかも無限に供給されることで、実質賃金が四半世紀にもわたる高度成長にも拘らず不変に止まる国」と定義できる。)

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全文の構成

  1. 3ページ
    はじめに
  2. 4ページ
    1. 分析課題とその背景
    1. 4ページ
      (「人口大国」の成長要因)
    2. 5ページ
      (先進国への影響)
  3. 6ページ
    2. 分析の枠組み
    1. 6ページ
      (先行業績の概観)
    2. 6ページ
      (従来の計測--Solow 残差による方法)
    3. 7ページ
      (Dual アプローチによる検討)
    4. 8ページ
      (分析の手法)
    5. 8ページ
      (モデルの地域、部門等分割)
    6. 9ページ
      (使用したデータ)
    7. 9ページ
      (シミュレーションの方法)
  4. 11ページ
    3. 分析結果(1) ――成長の要因
    1. 11ページ
      (シミュレーション結果――中国、インドの成長はどの程度追跡できたか)
    2. 11ページ
      (実績との乖離)
    3. 12ページ
      (生産等の部門別の動向)
    4. 14ページ
      (部門別の価格)
    5. 15ページ
      (生産要素等の寄与)
  5. 16ページ
    4. 分析結果(2) ―― 先進国への波及
    1. 16ページ
      (先進国に与えた影響)
    2. 17ページ
      (中国、インド別の影響)
    3. 17ページ
      (先進国の部門別の動向)
    4. 19ページ
      (日本とEU、米国の貿易・生産の変化の相違)
    5. 19ページ
      (所得配分への影響)
  6. 21ページ
    5. シナリオ分析 ―― 労働市場の硬直性の影響
    1. 21ページ
      (賃金が硬直の場合)
  7. 23ページ
    おわりに
  8. 24ページ
    付録
    1. 24ページ
      1. 成長要素の個別寄与度
    2. 30ページ
      2. 変化想定データ
    3. 31ページ
      3. GTAP の地域・部門分割
    4. 31ページ
      4. 中国、インド別シミュレーション結果
    5. 33ページ
      5. 貿易マトリックス(2001 年)
    6. 34ページ
      6. 中国のTFP 試算比較
    7. 35ページ
      7. インドのTFP 試算比較
  9. 36ページ
    参考文献
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)