ESRI Discussion Paper Series No.232
経済環境の変化と日本的雇用慣行

2010年3月
  • 濱秋 純哉(内閣府経済社会総合研究所 研究官)
  • 堀 雅博(内閣府経済社会総合研究所 主任研究官)
  • 前田 佐恵子(内閣府経済社会総合研究所 研究官)
  • 村田 啓子(内閣府経済社会総合研究所 特別研究員、首都大学東京大学院社会科学研究科教授)

要旨

バブル崩壊後の長期不況や高齢化など,近年の我が国における雇用を取り巻く環境には劇的な変化が指摘されている。しかし,いわゆる“失われた10年”(1992-2002年)が日本的雇用慣行に与えた影響を検証した多くの研究では,これまでのところ,年功賃金制や終身雇用制に大きな変化は見出されていない。このことは,日本的雇用慣行が外的ショックに対して容易には変化しないことを意味しているのかもしれない。そこで,本論文では,男性常用労働者における,年功賃金制と終身雇用制の最近年の変化を明らかにするために,直近20年間(1989-2008年)の『賃金構造基本統計調査』の個票データを用いた分析を行った。

まず,年功賃金制については,新卒採用後同一企業に勤務し続けている労働者の賃金プロファイルの変化を調べた。その結果,彼らのプロファイルの傾きは1990年代を通じて徐々に緩やかになり,その後直近年(2007-2008年)において,40歳以降では賃金がほとんど上昇しないという,プロファイルの屈曲が生じたことが分かった。この変化は,特に非製造業で働く大卒の労働者で顕著に見られる。一方,終身雇用制については,年齢別の終身雇用者比率と,同一コーホートにおける5年後の終身雇用者の残存率の変化を分析した。終身雇用者比率は,1990年代後半以降,大卒の若年層で明確な低下傾向が見られるが,中高年層においてはそのような傾向は見られない。また,残存率も,2000年代に入ってから大卒の若年層で大きく低下していることが確認された。

これらの結果は,近年の高齢化による労働者の年齢構成の変化や成長率の鈍化により,年功賃金制と終身雇用制がともに維持困難になっていると考えると理解し易い。同じ企業で働き続けても賃金の上昇が期待できないと感じた若年労働者は,より良い条件の職に就くべく,現職を離れる選択をするだろう。一方,中高年の労働者は,転職先を見つけるのが容易ではないため,賃金の低下を受け入れても現在の職に留まる選択をせざるをえない。

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全文の構成

  1. 1ページ
    1 Introduction
  2. 4ページ
    2 The Japanese Employment System and the Focus of Our Analysis
  3. 6ページ
    3 Evidence Reported in Previous Studies
  4. 8ページ
    4 Data Description
    1. 8ページ
      4.1 Data Sources
    2. 12ページ
      4.2 Calculated Measures
  5. 15ページ
    5 Empirical Findings
    1. 15ページ
      5.1 Changes in the Wage Profile
    2. 16ページ
      5.2 Changes in the Share of Lifetime Workers
    3. 18ページ
      5.3 Changes in the Job Retention Rate
    4. 20ページ
      5.4 Discussion
  6. 23ページ
    6 Conclusion
  7. 24ページ
    Appendix A. Reason for Focusing on Small Subgroups
  8. 26ページ
    Figures and Tables
  9. 37ページ
    References
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