ESRI Discussion Paper Series No.233
法人所得税の限界実効税率-日本の個別企業の実証分析-

2010年3月
  • 林田 吉恵(関西学院大学経済学部大学院研究員)
  • 上村 敏之(関西学院大学経済学部教授)

要旨

本稿では、投資家である家計の税制と法人所得税が企業の設備投資に与える影響を分析する。そのため、設備投資の資金調達手段の違いを考慮した個別企業ごとの租税調整済み資本コストと限界実効税率を計測して投資関数を推計し、投資率に対する法人実効税率の弾力性を求めた。本稿は、これらの分析結果の分布の推移に注目する。

限界実効税率の平均は1970年代から1990年代までにかけて高く推移し、その後に低下する。この動きは、法定税率の変遷や景気の変動によっておおむね説明できる。限界実効税率の分布は、1970年代から1990年代にかけて広がりを見せるが、2000年代になれば分布が小さくなる。

本稿で推計された投資関数は、理論的な符号条件を満たしている。租税調整済み資本コストの係数は、1970年代から1990年代まではさほど変わらないが、2000年代は小さくなった。推計された係数を用いれば、限界実効税率の投資率に対する弾力性を計測できる。弾力性の分布の推移をみると、1970年代と1980年代は弾力性の値は大きいものの、1990年代から2000年に入ると低下している。

本稿の分析により、以下の示唆を得ることができよう。過去の法人所得税は設備投資に対して影響力を持っていたと考えられるが、2000年代に入ってからは、法人所得税の設備投資への影響力はとても小さくなったことが指摘できた。

この背景には、低迷する経済、グローバル化の急激な進展など、企業と取り巻く環境が大きく変化していることがあるだろう。もはや、法人所得税が企業の設備投資に与える影響は小さく、他の要因が拡大してきたことを示唆している。

全文ダウンロード

法人所得税の限界実効税率-日本の個別企業の実証分析-別ウィンドウで開きます。(PDF形式 552 KB)

項目別ダウンロード(全2ファイル)

  1. 本文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 353 KB)
  2. 1ページ
    1. はじめに
  3. 2ページ
    2. 分析の枠組み
  4. 4ページ
    3. モデル
  5. 8ページ
    4. データ
    1. 8ページ
      4-1. 税制、価格等パラメータ
    2. 9ページ
      4-2. 企業変数
  6. 12ページ
  7. 14ページ
    6. 投資関数の推計と限界実効税率の弾力性の推移
  8. 16ページ
    7. むすび
  9. 17ページ
    補論.産業別の投資関数の推計結果
  10. 18ページ
    参考文献
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)