ESRI Discussion Paper Series No.254
遺産相続、学歴及び退職金の決定要因に関する実証分析
『家族関係、就労、退職金及び教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』の個票を用いて

2010年12月
  • 堀雅博(内閣府経済社会総合研究所 客員主任研究官、一橋大学経済研究所教授)
  • 濱秋純哉(内閣府経済社会総合研究所 研究官)
  • 前田佐恵子(内閣府経済社会総合研究所 特別研究員、内閣府政策統括官(経済社会システム担当)付)
  • 村田啓子(内閣府経済社会総合研究所 特別研究員、首都大学東京大学院社会科学研究科教授)

要旨

日本で進行する少子・高齢化は、1990 年代以降に生じた成長見込みの低下と相俟って、税や社会保障をはじめとする経済・社会制度の効率性・公平性・持続可能性に大きな影響を与えている。また、急激な構造変化の下で、近年世帯間の経済力格差が拡大しているとの議論も聞かれる。こうした問題に適切に対処するためには、客観的な材料に基づいて現在進行形の経済・社会の構造変化の実態を把握するとともに、その方向性を予測する等の分析が欠かせない。

経済社会総合研究所ではこの問題意識に立ち、個別世帯を対象とする『家族関係,就労,退職金及び教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』を実施した。調査項目は、家族関係、教育、遺産相続等多岐にわたるが、特に、既存のデータでは十分な情報が得られない個別世帯の保有資産、及びその世代間移転の状況を把握するための設問を多く含んでいる点に特徴がある。本稿の第一部では、このアンケート調査の内容、調査方法、及び簡易集計結果を紹介する。

第二部では、アンケートの個票を用いた分析事例を紹介する。具体的には、1. 贈与・相続による世代間移転、2. 教育による世代間移転、及び3. 退職一時金の実態と決定要因の分析結果を報告する。

まず、贈与・相続に関する分析からは、世帯主が高学歴である場合や長男である場合に贈与・相続の受取確率と受取額が高まること、また、これらの受取の大部分は親の死亡時に生じていること等が明らかになった。さらに、贈与・相続と所得・資産額の関係を分析すると、所得・資産額が大きい世帯ほど贈与・相続の受取が大きくなることが分かった。

つぎに、教育水準に関する分析では、両親の学歴が子供の教育水準の決定に与える効果が大きく、親の経済状況はそれに比べれば効果が小さいことが判明した。また、教育階層に分離・固定化が生じている可能性を検証したところ、社会全体の高学歴化が進んでおり、個別世帯の教育階層の固定化は生じていないことが分かった。

最後に、退職一時金の分析からは、勤続年数、企業規模、定年退職といった要素が、月収の倍率で測った退職金額(単位は月数)に影響する一方で、高卒と大卒の学歴間の差はほとんどないことが明らかとなった。また、退職金の期待はその実績値とある程度近いことも分かった。

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遺産相続、学歴及び退職金の決定要因に関する実証分析『家族関係、就労、退職金及び教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』の個票を用いて 別ウィンドウで開きます。(PDF形式 628 KB)

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  2. 1ページ
    要旨
  3. 1ページ
    第一部:『家族関係、就労、退職金及び教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』について
    1. 1ページ
      1-1 調査の趣旨
    2. 2ページ
      1-2 主な調査内容
    3. 4ページ
      1-3 調査の方法
    4. 4ページ
      1-4 回収状況と回答世帯の分布
    5. 6ページ
      1-5 主な調査結果
      1. 6ページ
        1-5-1 世帯の基本属性、及び就労・就学状況について
      2. 10ページ
        1-5-2 世帯主及び配偶者の両親に関する就労・就学経験等について
      3. 12ページ
        1-5-3 世帯主・配偶者の就労条件、転職経験や退職一時金について
      4. 15ページ
        1-5-4 世帯の保有資産・相続等について
    6. 17ページ
      1-6 今後の活用
    7. 18ページ
      参考資料:『家族関係、就労、退職金及び教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』調査票
  4. 26ページ
    1. 26ページ
      2-1 贈与・相続による世代間移転
      1. 26ページ
        2-1-1 実証モデルと推定
        1. 26ページ
          2-1-1-1 順序プロビット法と区間回帰法
        2. 27ページ
          2-1-1-2 説明変数の選択と記述統計
        3. 31ページ
          2-1-1-3 推定結果
      2. 34ページ
        2-1-2 世帯属性別の贈与・相続の受取確率と受取期待額
        1. 34ページ
          2-1-2-1 贈与・相続の受取確率
        2. 35ページ
          2-1-2-2 贈与・相続の受取期待額
      3. 37ページ
        2-1-3 贈与・相続と所得・資産格差
      4. 39ページ
        2-1-4 小括
      5. 42ページ
        参考文献
    2. 46ページ
      2-2 教育による世代間移転
      1. 46ページ
        2-2-1 教育水準の決定要因分析
      2. 50ページ
        2-2-2 個別変数の限界効果
      3. 50ページ
        2-2-3 教育水準決定の前段階としての配偶者学歴選択
      4. 54ページ
        2-2-4 学歴分布の世代間変化
      5. 57ページ
        2-2-5 小括
      6. 58ページ
        参考文献
    3. 60ページ
      2-3 退職金の実態と決定要因
      1. 61ページ
        2-3-1 退職一時金取得の状況とその要因
      2. 67ページ
        2-3-2 雇用者は自らの退職一時金をどの程度と期待しているか
      3. 71ページ
        2-3-3 小括
      4. 72ページ
        参考文献
  • 〒100-8914
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  • 電話 03-5253-2111(代表)