ESRI Discussion Paper Series No.261
マクロ経済変数のトレンドとサイクルの分離法の検証
-日本の実質GDPと失業率への応用-

2011年2月
  • 飯星 博邦(首都大学東京大学院社会科学研究科教授)

要旨

マクロ経済変数の経済成長(トレンド) 成分と景気循環(サイクル) 成分への分離法は、Beveridge とNelson(1981) の研究以降の約30 年間、HP フィルタなど数多くの統計学的手法が提案されているが、これらの推定値は一般的には一致しない。本稿は、Morley et al. (2003) やPerron and Wada (2009) 等の最新の分離法を使い、日本の実質GDP および完全失業率に適用した。この検証結果および先行研究から、たとえ同一のUnobservable Component Model を利用してもサイクルとトレンドを一意的に特定化することはできず、景気循環成分の周期の長短や振幅の大きさは、(1) トレンドとサイクルの2 つのショックの相関関係、(2) トレンドのショックの分散の大きさ、等に依存することが判明した。さらにPerron and Wada (2009) のような「急激な構造変化」(structural breaks) を考慮した混合正規分布をもつUnobservable Component Model で実質GDP を検証したところ、この分布における2 つの正規分布の分散比を予め特定化しないとPerron and Wada (2009)の結果と異なり、Morley et al. (2003) と同様なサイクル成分は周期が短く振幅が小さいものになった。本検証結果から、先行研究が用いている統計的手法のみでは、一意的にマクロ経済変数をトレンド成分とサイクル成分に分離をすることができないことが示唆される。

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  1. 本文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 400 KB)
  2. 1ページ
    概要
  3. 3ページ
    1 はじめに -本研究の動機-
  4. 7ページ
    2 トレンドのサイクル分離法の先行研究
    1. 7ページ
      2.1 統計的手法
    2. 11ページ
      2.2 ハイブリッド的手法
    3. 12ページ
      2.3 経済学的手法
  5. 13ページ
    3 本研究の基本モデル
    1. 13ページ
      3.1 基本モデル
    2. 15ページ
      3.2 Hodrick-Prescott(1997)フィルタの問題点
  6. 17ページ
    4 構造変化(Break)をもつUCモデル
    1. 17ページ
      4.1 混合正規分布モデル(Gaussian Mixture Model)
    2. 19ページ
      4.2 レジームスイッチ型ドリフト項モデル(Regime Switching StochasticTrend Model)
  7. 22ページ
    5 各モデルの比較と評価
  8. 24ページ
    6 結論
  9. 25ページ
    A 補論
    1. 25ページ
      A.1 ニューケインジアンフィリプス曲線を入れたBN分離法
    2. 25ページ
      A.2 Hodrick-Prescott Filter(1997)によるデータ処理法
  10. 27ページ
    B 参考文献
  11. 30ページ
    表1. UC-Dummy Modelの事後分布
  12. 31ページ
    表2. UC-0 Modelの事後分布
  13. 32ページ
    表3. UC-RWModelの事後分布
  14. 33ページ
    表4. UC-GM Modelの事後分布
  15. 34ページ
    表5. UC-MS-R2 Modelの事後分布
  16. 35ページ
    表6. UC-MS-R3 Modelの事後分布
  17. 36ページ
    表7. UC-ST-R3 Modelの事後分布
  18. 37ページ
    表8. 各モデルの比較
  19. 38ページ
    表9. 各UCモデルのサイクル成分の相関係数
  20. 39ページ
    図1. 混合正規分布別ウィンドウで開きます。(PDF形式 461 KB)
  21. 40ページ
    図2. UC-Dummy ModelによるGDPの推定結果
  22. 41ページ
    図3. UC-Dummy Modelによる完全失業率の推定結果
  23. 42ページ
    図4. UC-0 ModelによるGDPの推定結果
  24. 43ページ
    図5. UC-0 Modelによる完全失業率の推定結果
  25. 44ページ
    図6. UC-RW (1) ModelによるGDPの推定結果
  26. 45ページ
    図7. UC-RW (2) ModelによるGDPの推定結果
  27. 46ページ
    図8. UC-RW Modelによる完全失業率の推定結果
  28. 47ページ
    図9. UC-GM Model (1)によるGDPの推定結果
  29. 48ページ
    図10. UC-GM Model (2)によるGDPの推定結果
  30. 49ページ
    図11. UC-GM (3) ModelによるGDPの推定結果
  31. 50ページ
    図12. UC-GM Modelによる完全失業率の推定結果
  32. 51ページ
    図13. UC-MS-R2 ModelによるGDPの推定結果
  33. 52ページ
    図14. UC-MS-R3 ModelによるGDPの推定結果
  34. 53ページ
    図15. UC-MS-R3 Modelによる完全失業率の推定結果
  35. 54ページ
    図16. UC-ST ModelによるGDPの推定結果
  36. 55ページ
    図17. UC-ST Modelによる完全失業率の推定結果
  37. 56ページ
    図18. UCモデルのサイクルと一致CIの比較
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