ESRI Discussion Paper Series No.263
IT導入の効果に関する日本企業の特異性と企業改革の有無
―日米独韓4カ国企業の実証分析―

2011年2月
  • 篠崎 彰彦(九州大学大学院経済学研究院教授)
  • 佐藤 泰基(情報通信総合研究所研究員)

要旨

本稿では、日米独韓の4カ国企業を対象に、企業改革の有無がIT導入効果にどのような違いをもたらしているかを比較分析し、IT導入効果が低いとされる日本企業の特徴を再考した。具体的には、4カ国企業計1,260社からのアンケート調査結果をもとに、企業改革を実施した企業群としなかった企業群との間にIT導入効果の認識にどの程度の違いがあるかを各国別に確認した上で、17の企業改革項目ごとに改革を実施した企業群だけを抽出し、日米独韓の4カ国でITの導入効果の認識に統計的に有意差がみられるかを多重検定した。その結果、日本企業は、企業改革の有無がIT導入の効果に有意な差をもたらす程度が他の3カ国企業に比べて高いこと、また、企業改革を実施した企業だけを抽出した場合、日本企業と他の3カ国企業との間でIT導入効果に有意な差がみられない項目が増えることの2点が明らかとなった。全般的にみると、日本企業はIT導入の効果があったと回答する割合は低いが、事業部門の分割などの企業改革を実施したと回答した企業群では、他の3カ国企業と同程度の回答となっており、大胆な企業改革によって諸外国と同様のIT導入効果を得る可能性が高まると考えられる。裏を返すと、日本以外の企業では、もともと企業の仕組みがITに親和的であり、企業改革がない場合でも一定のIT導入効果が得られやすいのに対し、日本企業はもともとの仕組みがITに非親和的で、大胆な改革を実施すれば一定の効果が得られるが、改革を行わなければ効果を得にくい構造にあることを示唆する結果といえる。

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全文の構成

  1. 1ページ
    要旨
  2. 3ページ
    1. 本稿の目的と背景
  3. 4ページ
    2. 分析方法
    1. 4ページ
      2-1 企業改革の有無とIT導入効果の国別クロス分析
    2. 5ページ
      2-2 企業改革を実施した企業群の4カ国多重検定
  4. 5ページ
    3. 分析結果
    1. 5ページ
      3-1 企業改革の有無とIT導入効果の有無の国別クロス分析
    2. 6ページ
      3-2 企業改革を実施した企業群の4カ国多重検定
  5. 7ページ
    4. 本稿のまとめ
  6. 8ページ
    参考文献一覧
  7. 10ページ
    図表一覧
  8. 10ページ
    図表1 経営計画の立案と実行能力の向上効果があったと回答した企業の割合
  9. 10ページ
    図表2 国別アンケート回答企業数と分析対象企業数
  10. 11ページ
    図表3 企業改革とIT導入効果に関するクロス集計の一例
  11. 11ページ
    図表4 改革実施数11企業分布(4カ国別)
  12. 12ページ
    図表5 χ2乗検定によるクロス分析
    1. 12ページ
      (1) 日本企業
    2. 13ページ
      (2) 米国企業
    3. 14ページ
      (3) ドイツ企業
    4. 15ページ
      (4) 韓国企業
  13. 16ページ
    図表6 日米独韓4カ国企業の多重検定(日本と他の3カ国の結果)
    1. 16ページ
      (1) 経営面、業績面、顧客面の効果(効果ありと回答した企業割合の多重検定)
    2. 17ページ
      (2) 業務面(コスト)、業務面(付加価値)、職場面の効果(効果ありと回答した企業割合の多重検定)
  14. 18ページ
    図表7 IT導入効果の多重検定(日本と米・独・韓との有意差検定)
  15. 18ページ
    図表8 企業改革を実施したと回答した社数(国別項目別)
  16. 19ページ
    〔補論〕アンケート調査の概要
    1. 19ページ
      1. 調査対象と方法
    2. 19ページ
      2. 調査の実施時期と回答社数
    3. 20ページ
      3. アンケートの設問項目
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)