ESRI Discussion Paper Series No.266
CO2 削減における日本と中国の役割:世界モデルによる分析

2011年6月
  • 伴 金美(内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官、大阪大学大学院経済学研究科教授)

要旨

2009 年12 月に開催されたCOP15 におけるコペンハーゲン合意に基づいて、各国は2020年までの削減目標を国連気候変動枠組条約事務局に報告する義務を負った。それに対して日本政府は1990 年比25%削減という目標を示した。しかし、意欲的な目標に対しては懐疑論が強い。特に、日本の産業の国際競争力への悪影響が懸念されている。

本論文の前半では、コペンハーゲン合意に基づいて各国が示した2020 年までの削減目標を履行したとき、各国の経済に対してどのような影響を与えるかについて、国際多地域動学CGE モデルを用いて分析した。明らかになったのは次の点である。

  1. (1). 中国を含めた主要排出国が目標を達成すれば、世界全体のCO2 排出量は3.6%減少し、懸念されている炭素リーケージは9.9%にとどまる。しかし、中国が目標を持たない場合、CO2 排出量は3.4%減にとどまり、炭素リーケージは14.5%となる。その意味で、コペンハーゲン合意における中国の役割は大きい。
  2. (2). コペンハーゲン合意がGDP に与える影響は、BAU と比較し、日本マイナス1.4%、米・EU マイナス0.3%に対して、中国はプラス0.3%となる。
  3. (3). 日本の鉄鋼業は、BAU と比較し、鉄鋼業生産は11%減で強い影響を受けるが、機械機器・輸送機器生産への影響は軽微であり、輸出も増加する。さらに、排出量収入を資本所得減税に充当すれば、GDP ロスをマイナス0.6%に軽減することができる。

本論文の後半では、日本の国内での削減を15%にとどめ、残りの10%を日本と中国の二国間クレジットで削減し、両国が排出量収入の一部を資本所得減税に充当すれば、日本のGDP ロスはさらに小さくなり、また中国のGDP はさらに増加する。その意味において、日中間の環境分野での協力関係の強化は、両国にとって望ましい結果をもたらすと言える。

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全文の構成

  1. 1ページ
    目次
  2. 2ページ
    要旨
  3. 4ページ
    1.はじめに
  4. 6ページ
    2.世界モデルのデータと構造
    1. 6ページ
      2-1データ
    2. 8ページ
      2-2モデルの基本構造
    3. 10ページ
      2-3モデルの動学メカニズム
  5. 12ページ
    3.BAU(Business as Usual)シナリオ
  6. 16ページ
    4.コぺンハーゲン合意の効果とその経済的影響
    1. 16ページ
      4-1二酸化炭素排出量への影響
    2. 19ページ
      4-2各国・地域のGDP への影響
    3. 20ページ
      4-3日本25%削減の日本経済への影響
  7. 24ページ
    5.日本と中国の政策オプション
    1. 24ページ
      5-1国内で25%削減・排出量収入で資本所得税減税
    2. 25ページ
      5-2国内で15%削減、中国から10%排出量購入
  8. 27ページ
    6.終わりに
  9. 28ページ
    参考文献
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