ESRI Discussion Paper Series No.275
6次産業化が稲作農業経営体の生産性に与える影響について

2011年9月
  • 空閑 信憲(内閣府経済社会総合研究所特別研究員)

要旨

本稿では、我が国の稲作農業経営体の生産性変化に6次産業化が及ぼす影響の大きさについて、2004年から2008年までの『農業経営統計調査』の個票データを用いて分析した。生産性計測には、DEA効率値及びマルムクイスト生産性指数を使用した。また、計測されたDEA効率値及びマルムクイスト生産性指数の要因分析を行うことにより、6次産業化の取り組み等がTFPの変化に与えうる影響についても分析を行った。

本分析の結果、主に以下の3点が明らかとなった。第1に、6次産業化取組農家の平均的なTFP水準は、非取組農家の平均的なTFP水準よりも高いことである。一方で、6次産業化取組農家のTFP変化の伸びは、総じて非取組農家を下回る傾向がある。第2に、稲作農家全体の特徴として、作付延べ面積のうち稲の占める割合、資本節約・労働使用的な傾向、そして、農業経営費と比較した相対的な6次産業化事業費の割合が大きいほど、TFP水準・変化がともに高くなることである。第3に、6次産業化取組農家のTFP変化については、総労働時間に占める女性労働力の割合がプラスの影響を及ぼしていることである。

本稿の分析で明らかになったように、6次産業化事業費の比率が大きくなるほど経営体の生産性の水準・変化の伸びは高くなることから、6次産業化の取り組みは経営体の生産性の向上に寄与すると考えられる。一方で、農地のまとまった利用集積が進んでいない現状を考慮すると、6次産業化の取り組みを生産性の向上につなげるためには、作付延べ面積に占める稲の割合を高めるとともに、女性労働力の利活用を軸にした土地節約・労働使用的な農業経営を推進していくことが必要であると考えられる。

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全文の構成

  1. 要旨
  2. 3ページ
    1. はじめに
  3. 3ページ
    2. 分析対象とデータ
  4. 5ページ
    3.本論文で使用するデータ
  5. 6ページ
    4.DEA効率値とマルムクイスト生産性指数の計測結果
  6. 7ページ
    5. 要因分析
  7. 10ページ
    6. おわりに
  8. 12ページ
    参考文献
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