ESRI Discussion Paper Series No.283
日本における外国人の定住化についての社会階層論による分析
‐職業達成と世代間移動に焦点をあてて‐

2012年2月
  • 是川 夕(内閣府経済社会総合研究所研究官)

要旨

日本における外国人人口は1989 年の入管法改正以降,急激に増加ペースを速め,2008年末には2,217,426 人,総人口比で1.74%と,1989 年末の2.2 倍へと達した.これは,他の先進諸国と比較すると依然として低い水準であるが,この間に日本が経験した変化は非常に大きい.それに伴い,定住化に伴って,移民が職業などの社会経済的地位の達成をどのように行っていくのかという,社会階層論的な分析の重要性が増してきている.

こうした変化と関心の高まりは,日本に限ったものではなく,近年,先進各国に共通の課題となりつつあるものである.その一方,欧米と異なり日本では,外国人の定住化に関する研究は,社会階層の制度・構造面に照準することが多かったものの,実際の階層達成が個人レベルでどのように行われているかについては,ほとんど明らかにしてこなかった.

そこで,本研究は,入管法改正から約10 年後の2000 年に行われた国勢調査の個票データの内,外国人に関する全数を用いて,個人レベルでの階層達成,及び子の世代の教育達成がどのように行われているかを,人的資本,社会関係資本の蓄積の個人間の差異から明らかにすることとし,日本における外国人の定住化を階層論的に分析した.

その結果,日本における外国人の定住化における個々人の階層達成の差異は,主に人的資本の違いから説明されることが明らかになった.その一方で,階層達成における機会構造は,主に人的資本の効果を低減させることを通じて,集合レベルで層化/分断されており,その結果,日本人との格差及び国籍間格差がともに大きいことが示された.これは,これまで行われてきた構造主義的アプローチによる研究成果と整合的な結果といえよう.さらに,親世代の階層的差異は,子の教育達成への影響を通じて,世代間における階層間格差を固定する可能性が高いことが示された.

こうした結果は,これまで構造決定論的に分析されることの多かった外国人の階層達成を,世代間移動も含め,個人レベルの階層達成の視点から明らかにした点で画期的であるといえよう.

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全文の構成

  1. 要旨
  2. 1ページ
    1. 問題の所在
  3. 3ページ
    2. 先行研究の検討と仮説の設定
    1. 3ページ
      2.1. 欧米の先行研究
    2. 4ページ
      2.2. 日本における先行研究
    3. 5ページ
      2.3. 仮説の設定
  4. 6ページ
    3. データ,及び方法論
    1. 6ページ
      3.1. データ
    2. 6ページ
      3.2. 方法論
      1. 6ページ
        3.2.1. 職業達成
      2. 7ページ
        3.2.2. 子の教育達成
  5. 9ページ
    4. 職業達成,及び教育達成の現状と国籍ごとの傾向
    1. 9ページ
      4.1. 職業達成の現状と国籍ごとの傾向
  6. 11ページ
    5. 推定結果
    1. 11ページ
      5.1. 人的資本の効果
    2. 12ページ
      5.2. 社会関係資本の効果
    3. 14ページ
      5.3. 推計値の比較
    4. 15ページ
      5.4. 自営開業
    5. 18ページ
      5.5. 世代間移動
  7. 22ページ
    6. 結論
  8. 23ページ
    参考図表1:W 雇上に関する推定結果
  9. 24ページ
    参考図表2:自営開業に関する推定結果
  10. 24ページ
    参考図表3:子の教育達成(父職モデル)
  11. 25ページ
    参考図表4:子の教育達成(父学歴モデル)
  12. 25ページ
    参考図表5:子の教育達成(母子家庭モデル)
  13. 27ページ
    【参照文献】
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)