ESRI Discussion Paper Series No.287
東日本大震災が新卒者の賃金に与えた短期的影響について
―教育の質の役割に着目して―

2012年8月
  • 乾 友彦(日本大学教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)
  • 権 赫旭(日本大学准教授)
  • 妹尾 渉(国立教育政策研究所総括研究官)
  • 中室 牧子(東北大学大学院助教)
  • 平尾 智隆(愛媛大学講師)
  • 松繁 寿和(大阪大学教授)

要旨

本稿の目的は、学校から就業に移行する時期に発生した東日本大震災が、2010年度の大卒者の賃金に与えた短期的影響を実証的に明らかにすることである。更に、震災が新卒者の賃金に与えた負の影響に対して、彼らが直近に卒業した大学教育の質がどのように働いたのかを明らかにした。インターネットの大手ショッピングサイトに登録しているモニターのうち、2008年度から2010年度までに卒業した20代の若者を対象にしたアンケート調査のデータを用いた実証分析からは、震災直後に就職した2010年度の新卒者の賃金が、それ以前に就職した同程度の能力の若者よりも有意に低いことが明らかになった。また教育の質は初任給に対して影響を与えているだけでなく、震災直後に就職した新卒者の賃金に対する負の影響を緩和する方向に働いていることが示された。

本稿の分析からは、2010年度の新卒は、年度末に卒業したことから、厳しい人材選別や内定切りなどの雇用調整の影響は受けにくく、むしろ賃金調整による影響を受けたグループである可能性が示唆されている。一方、2011年度に卒業を予定しているグループは、震災による教育中断の影響を受けているだけでなく、震災後の需要の減少による雇用調整圧力を直接的に受けているとみられる。このことから、2010年度の新卒者はもちろんのこと、2011年度の卒業予定者の賃金、雇用、教育への影響を把握するためには、パネルデータ設計によって、調査対象の個人を長期間追跡調査することが肝要である。

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全文の構成

  1. 要旨
  2. 1ページ
    1. 初めに
  3. 2ページ
    2. 先行研究
  4. 4ページ
    3. 分析のフレームワーク
    1. 4ページ
      3-1. データ
    2. 5ページ
      3-2. 推計モデル
    3. 5ページ
      3-3. 推計に用いる変数
    4. 7ページ
      3-4. 記述統計量
  5. 7ページ
    4. 推計結果
    1. 7ページ
      4-1. 賃金と卒業時期、教育の質の関係
  6. 8ページ
    5. ディスカッション
    1. 8ページ
      5-1. 2011 年度卒業者の動向
    2. 9ページ
      5-2. 新卒効果と震災効果
    3. 9ページ
      5-3. 教育の内生性バイアス
  7. 10ページ
    6. 結論
  8. 10ページ
    参考文献
  9. 12ページ
    表 1: 記述統計量
  10. 15ページ
    表 2: 卒業年度別の比較
  11. 16ページ
    表 3: 推計結果(lwage)
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