ESRI Discussion Paper Series No.290
低頻度巨大災害に対する国民の政策選好に関する調査

2012年10月
  • 永松 伸吾(関西大学社会安全学部 准教授)
  • 佐藤 主光(一橋大学大学院経済学研究科 教授)
  • 宮崎 毅(明海大学経済学部 准教授)
  • 多田 智和(内閣府経済社会総合研究所 主任研究官)

要旨

2011年3月に発生した東日本大震災は、政府の想定をはるかに上回る規模の巨大災害であり、こうした低頻度巨大災害を軽減するための防災・減災政策の新たな方向性が模索されている。
低頻度巨大災害への対策は政策上きわめて難しい性質を有している。めったに発生しない災害への対策の効果はほとんど実感されないゆえに、限られた政策的資源をどの地域にどういった優先順位で投じるべきかについての明確な規範は存在しない。また低頻度であるがゆえに対策の中身を決定し実施するのは現在世代だが、その対策の恩恵を受けるのは現在世代とは限らず、むしろ将来世代である可能性が高い。これからの防災・減災政策において、こうした様々な課題をどのように乗り越えていくかは、大きな政策的挑戦である。
本稿は、こうした議論の参考となることを目的として、震災後の2011年11月に行ったインターネット調査のデータを基に、巨大災害対策に関する国民の選好を明らかにすることを目的としている。

本研究で得られた主要な結論は以下のとおりである。

第一に、国民は地震災害リスクをこれまで以上に不確実なものと考えている。防災投資の地域間配分について、ハザードの発生確率によって決めるよりも、全国まんべんなく、あるいは予想される被害の大きさに応じて配分すべきであるという考え方がより支持されている。また、東日本大震災の発生により、事前の防災対策から事後的な被災者支援に政策選好がシフトしているという傾向も明らかになった。これも災害リスクをより不確実なものと国民が考えるようになったとすれば、当然の結果であると言えよう。
一方で災害リスク軽減の方策について、国民の多くは10年以内の事業実施を望み、負担は基本的に現代世代が行うが、ハード的な対策によって抑止できる外力はせいぜい数十年から100年に一回程度の規模のものであり、それを上回るハザードについてはソフトで対応すべきであるというのが大方の選好である。土地利用規制を伴う都市の再開発など大規模なコストと時間を必要とする抜本的な対策については国民の支持は必ずしも高くない。このような世論に沿った防災対策は、中長期的な災害被害の軽減につながらず、目の前の災害リスクにアドホックに対応していくようなものになる危険性がある。

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  2. 要旨
  3. 3ページ
    1. はじめに
  4. 4ページ
    2.先行調査
    1. 4ページ
      2.1 東京都「都民生活に関する世論調査」(1972 年~1997 年までは「都民要望に関する世論調査」、1998 年以降「都民生活に関する世論調査」として毎年実施)
    2. 4ページ
      2.2 内閣府「国民生活に関する世論調査」(1948 年は「国民生活(都市住民)に関する世論調査」、1954 年以降「国民生活に関する世論調査」としてほぼ毎年実施)
    3. 4ページ
      2.3 内閣府「防災に関する世論調査」(1982 年、1984 年、1987 年、1989 年、1991 年、1995年、1997 年、2002 年)、「地震防災対策に関する特別世論調査」(2005、2007 年)、「防災に関する特別世論調査」(2009 年)
    4. 5ページ
      2.4 内閣府「河川と土砂害に関する世論調査」(1985 年)、「治水対策に関する世論調査」(1991 年)、「河川に関する世論調査」(1996 年)、「防災と情報に関する世論調査」(1999年)、「水害・土砂災害等に関する世論調査」(2005 年)
    5. 5ページ
      2.5 神谷秀美、中林一樹、高野公男『阪神淡路大震災の前後における首都圏居住者の地震防災意識と対策の変化』(1996 年)
    6. 5ページ
      2.6 理論的な研究
  5. 7ページ
    3.アンケート質問票の設計
  6. 9ページ
    4.結果概要とクロス分析
    1. 9ページ
      4.1 大規模地震対策について
    2. 17ページ
    3. 22ページ
      4.3 防災対策事業全般について
    4. 25ページ
      4.4 小括別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.4 MB)
    5. 26ページ
      4.5 自助努力と被災者支援
      1. 27ページ
        4.5.1 分析方法
      2. 28ページ
        4.5.2 リスクマネジメントの概念からの整理ここで、「居住立地の選択」、「住宅耐震性の選択
      3. 28ページ
        4.5.3 平均値の分析
      4. 28ページ
        4.5.4 差分の分析
      5. 28ページ
        4.5.5 「住宅耐震性の選択」、「居住立地の選択」についての考察
      6. 31ページ
        4.5.6 「地震保険加入の選択」、「貯蓄水準」についての考察
  7. 32ページ
    5.東日本大震災前後の政策選好の変化に関するロジット分析
    1. 32ページ
      5.1 分析の目的
    2. 32ページ
      5.2 分析に使用する変数
      1. 33ページ
        5.2.1 個人属性
      2. 34ページ
        5.2.2 居住地を表す変数
      3. 34ページ
        5.2.3 東日本大震災による被災の程度について
      4. 36ページ
        5.2.4 都市居住者と農山漁村居住者に関する代理変数
      5. 37ページ
        5.2.5 将来の楽観度に関する因子分析
      6. 37ページ
        5.2.6 変数間の相関
    3. 41ページ
      5.3 分析方法
    4. 42ページ
      5.4 事前と事後の災害政策
    5. 45ページ
      5.5 防災投資と費用負担
    6. 45ページ
      5.6 地域再編成・土地の利用規制
    7. 61ページ
      5.7 自助と政府の関与
      1. 61ページ
        5.7.1 分析方法
      2. 63ページ
        5.7.2 分析結果
    8. 67ページ
      5.8 分析結果
  8. 69ページ
    6. まとめ
  9. 70ページ
    謝辞 参考文献 参考資料
  10. 71ページ
    参考 内閣府経済社会総合研究所「持続可能な防災・減災政策体系のあり方に関する研究会」メンバー (2012 年3 月31 日現在)
  11. 73ページ
    巻末資料
    1. 73ページ
      目次
    2. 74ページ
      アンケート調査の概要と留意点
    3. 75ページ
      調査票
    4. 85ページ
      集計表
    5. 103ページ
      グラフ
    6. 123ページ
      構成比の差分(全体集計)
    7. 126ページ
      平均の差と、平均の差の検定のt 値
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)