ESRI Discussion Paper Series No.291
温暖化対策における国境調整措置の動学的応用一般均衡分析
2012年10月
要旨
本稿は、多地域・多部門の動学的応用一般均衡モデル(CGEモデル)を用いて、先進国(Annex B国)において排出規制とともに国境調整措置が導入されたときの経済的影響を定量的に分析している。モデルには12地域、22部門、2004年から2020年までの逐次動学モデルを、データにはGTAP7.1データを利用している。2020年までに、先進各国が削減をおこなう状況を想定した上で、国境調整措置の導入が、炭素リーケージ、エネルギー集約貿易部門(EITE部門)、GDP、厚生等にどのような効果をもたらすかを分析している。
主な結論は以下の通りである。まず、国境調整措置は炭素リーケージを抑制する効果を確かに持つが、その効果はあまり大きいとは言えない。第二に、国境調整措置によりEITE部門へのマイナス効果を抑制できる(国際競争力を回復できる)ことがわかった。ただし、この効果は国や部門によってかなりの差がある。また、特に日本の鉄鋼部門が国境調整措置から大きな恩恵を受けるということもわかった。第三に、厚生、GDPへの効果は総じて小さく、国境調整措置の導入は、厚生、GDPという側面にはほとんど影響をもたらさないという結果となった。
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温暖化対策における国境調整措置の動学的応用一般均衡分析(PDF形式 547 KB)
全文の構成
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要旨
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1ページ1. はじめに
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2ページ2. ベンチマーク・データ
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3ページ3. モデル
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3ページ3.1. モデルの概要
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4ページ3.2. 生産サイドの行動
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6ページ3.3. 家計の行動
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7ページ3.4. 貿易
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8ページ3.5. 政府
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8ページ3.6. 排出規制
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9ページ3.7. 動学構造
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9ページ3.7.1. モデルの動学的設定
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10ページ3.7.2. 貯蓄・投資の決定方法
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10ページ3.7.3. 資本ストックの扱い
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11ページ3.7.4. 技術進歩
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12ページ3.8. BAU(Business as usual)均衡の導出
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12ページ3.8.1. 技術進歩率の決定方法
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13ページ3.8.2. 生産要素賦存量と政府支出
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13ページ4. 排出規制と国境調整措置
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13ページ4.1. 排出規制
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15ページ4.2. 国境調整措置
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17ページ5. 分析結果
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17ページ5.1. 炭素リーケージへの影響
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17ページ5.2. EITE 部門への効果
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19ページ5.3. 厚生、GDP への効果
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21ページ5.3.1. JPN(日本)
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22ページ5.3.2. EUR(EU27 カ国)
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22ページ5.3.3. USA(アメリカ合衆国)
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22ページ5.3.4. ANZ(オーストラリア・ニュージーランド)
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24ページ5.3.5. CHN(中国)
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24ページ5.4. 結果のまとめ
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25ページ6. 感応度分析
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25ページ6.1. 感応度分析の説明
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27ページ6.2. 感応度分析の結果
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27ページ6.2.1. リーケージ率
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28ページ6.2.2. EITE 部門の生産・輸出
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29ページ6.2.3. 厚生と GDP への効果
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30ページ6.3. 感応度分析のまとめ
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31ページ7. 終わりに
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32ページ参考文献
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35ページ補論:モデルの説明
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35ページA-1. 説明
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36ページA-2. 記号
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40ページA-3. ゼロ利潤条件と価格指数
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43ページA-4. 需要、供給
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43ページA-5. 市場均衡条件
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45ページA-6. 所得
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46ページA-7. 排出規制
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46ページA-8. 資本蓄積
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