ESRI Discussion Paper Series No.294
若年労働市場における教育過剰―学歴ミスマッチが賃金に与える影響―

2012年12月
  • 乾 友彦(日本大学経済学部教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)
  • 権 赫旭(日本大学経済学部准教授)
  • 妹尾 渉(国立教育政策研究所総括研究官)
  • 中室 牧子(東北大学大学院文学研究科助教)
  • 平尾 智隆(愛媛大学教育・学生支援機構講師)
  • 松繁 寿和(大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)

要旨

本研究の目的は,日本の若年労働市場において,教育過剰が賃金に与える負の影響を統計的に検証することにある。また,人的資本理論と仕事競争モデルという2つの労働市場理論のどちらがより現実妥当性を持つのかを学歴ミスマッチの観点から検証する。その上で,高学歴化と教育過剰に関する政策対応を議論する。

具体的には,同じ学歴を獲得したにもかかわらず,より低い学歴しか求められない仕事に就いた者(教育過剰者)とその学歴に見合った仕事に就いた者(教育適当者)の賃金を比較する。さらに,より高い学歴が求められる仕事に就いた者(教育過少者)の賃金を教育適当者のそれと比較することを通じて,労働市場理論の現実妥当性を検討する。

一般に教育過剰とは,個人の教育達成(学歴)が,その個人が就いている仕事に必要とされる教育達成よりも高い場合をいう。マクロ経済レベル,企業レベル,個人レベルのいずれでみても,教育過剰は多くのコストを支払うことになる非効率的な状態であり,高学歴化の進行とともに議論される必要のある重要な社会問題である。しかし,戦後日本の学校教育の歴史は高学歴化の歴史であったにも関わらず,教育過剰の実証分析は日本ではほとんど行なわれてこなかった。本研究は,日本のデータを使った初の教育過剰研究である。

分析の結果,他の条件を同一とした時,教育過剰者は教育適当者に比べて賃金が低いことが明らかになった。教育過剰は賃金に負の影響を与えていた。また,他の条件を同一とした時,教育過少者の賃金は教育適当者のそれと比べて高い傾向が明らかになった。日本の若年労働市場においては,人的資本理論よりも仕事競争モデルにより現実的な妥当性がある可能性が示された。

本文のダウンロード

若年労働市場における教育過剰―学歴ミスマッチが賃金に与える影響―別ウィンドウで開きます。(PDF形式 458 KB)

全文の構成

  1. 要旨
  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 2ページ
    2.先行研究
  4. 3ページ
    3.理論的検討
    1. 3ページ
      (1)教育過剰の計り方
    2. 4ページ
      (2)経済理論による解釈
      1. 4ページ
        (a)人的資本理論
      2. 4ページ
        (b)仕事競争モデル
    3. 5ページ
      (3)仮説の設定
  5. 7ページ
    4.調査概要とデータ
  6. 7ページ
    5.実証分析
    1. 7ページ
      (1)推定モデル
    2. 8ページ
      (2)推定に用いる変数と記述統計量
    3. 8ページ
      (3)教育過剰が賃金に与える影響
    4. 9ページ
      (4)教育過剰を決定する要因
  7. 10ページ
    6.まとめと議論
    1. 12ページ
      (付記)
  8. 12ページ
  9. 14ページ
    引用文献
  10. 17ページ
    図 1 高度経済成長期以後の高学歴化
  11. 17ページ
    図 2 高学歴者の就職率
  12. 18ページ
    表 1 教育過剰の計測方法
  13. 18ページ
    表 2 教育過少の賃金差
  14. 19ページ
    表 3 変数の説明
  15. 21ページ
    表 4 記述統計量
  16. 22ページ
    表 5 分散分析
  17. 22ページ
    表 6 多重比較検定
  18. 23ページ
    表 7 教育過剰が賃金に与える影響(1)
  19. 24ページ
    表 8 教育過剰が賃金に与える影響(2)
  20. 25ページ
    表 9 教育過剰が賃金に与える影響(3)
  21. 26ページ
    表 10 教育過剰が賃金に与える影響(4)
  22. 27ページ
    表 11 学歴と教育過剰
  23. 28ページ
    表 12 教育過剰の決定要因
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)