ESRI Discussion Paper Series No.295
子どもを持つ若年層を対象とした幸福度に関する研究

2013年1月
  • 上田 路子(シラキュース大学 リサーチ・アシスタント・プロフェッサー、内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
  • 川原 健太郎(内閣府経済社会総合研究所政策調査員)

要旨

少子化問題を抱える現代社会において、一人でも多くの親が幸福を感じながら子育てをしていけるようにすることは大切である。特に次代を担う若年層が子育てに対して不安を感じ、子どもを持つことを躊躇することにならないよう、その現状を明らかにし解決策を探ることによって、子どもを持つことで未来への希望を持てるようにすることが求められる。本研究は平成23年度に内閣府によって実施された「生活の質に関する調査」を用い、20代・30代の子育て世代の幸福度が、子どもの存在によってどのように影響を受けているかを分析するものである。特に、子育ての負担は女性に多くかかっていると考えられることから、男女別の分析を様々な角度から試みた。

分析の結果、子どものいる若年層の女性は、子どもがいない同年代の女性に比べて、現在の幸福感、生活満足度、5年後の幸福度のいずれもが低い傾向にあることが明らかになった。男性の場合、子どもがいる男性と子どもがいない男性に間に幸福度の差は存在しない。さらに、世帯収入の高い女性は収入レベルが低い女性に比べて全般的に幸福度が高いものの、子どもがいる女性とそうでない女性の幸福度の差はかえって大きく、この結果は収入の高さは子育てに関する負担感を補うわけではないことを示唆している。また、常用雇用され、かつ子どもがいる女性は、現在の幸福感も生活満足度も低いという統計的に有意な結果が得られた。つまり、子どもを持つ女性の幸福度が子どもを持たない女性に比べて低いのは、共働きをしている女性が子育ての負担を多く感じていることによると思われる。さらに子育て支援サービスに満足している女性の幸福度と、子どもがいない女性の幸福度の間に統計的に有意な差は存在しない一方、満足していない女性の場合は、子どもがいない女性にくらべて幸福度が低い。この結果は子育て支援サービスの充実の重要性を示唆している。

本研究の分析モデルでは、回答者が結婚している年数を入れることができなかったため、本研究の結果では有配偶で子どものいない若年層の多くが新婚である可能性が高く、その後子どもを持つ時には幸福度が下がってしまう恐れがあることに注意が必要である。

また、本研究はあくまでも子育ての入り口に直面している若年層に限った分析であり、必ずしも子どもを持つことそのものが幸福感を下げることを示すものではない。子育て初心者で悩みに直面する若年層が子どもを持つことの負担感がなくなるよう、より一層の支援の充実が重要であると思われる。

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全文の構成

  1. 要旨
  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 2ページ
    2.先行研究
  4. 4ページ
    3.調査の概要
  5. 5ページ
    4.子どもの有無と主観的幸福度
  6. 17ページ
    5.まとめ
  7. 19ページ
    補論 子どもを持つ若年層の生活時間の満足と現在の幸福感
  8. 23ページ
    参考文献
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