ESRI Discussion Paper Series No.301
夫婦の出生力の低下要因に関する分析
~「少子化と夫婦の生活環境に関する意識調査」の個票を用いて~

2013年8月
  • 山田 昌弘中央大学文学部教授
  • 松田 茂樹中京大学現代社会学部教授
  • 施   利平明治大学情報コミュニケーション学部教授
  • 永田 夏来国立大学法人兵庫教育大学助教
  • 内野 淳子前内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官
  • 飯島 亜希内閣府経済社会総合研究所研究官

要旨

我が国においては、長期的に出生率が低下傾向で推移し、その要因として未婚化の影響が大きいことが指摘されているが、夫婦の出生児数も近年、減少傾向にある。夫婦の出生力低下の背景には、夫婦を取り巻く生活環境とともに経済状況や夫婦の意識、価値観も影響していると考えられる。

経済社会総合研究所では、少子化の動向を検討するための基礎的資料となる夫婦の出生力に関する分析を行うため、20代から40代の既婚男女を対象に夫婦を取り巻く生活環境や夫、妻の意識、価値観等について意識調査を実施した。本稿の第1部では、この意識調査の趣旨、方法、及び主な調査結果について紹介する。

第2部では、意識調査の個票を用いて、夫婦の出生力や出生意欲の低下に関係する要因について異なる角度から分析した結果を報告する。主な結論は次のとおりである。

1)夫婦の育児分担、情緒関係、共同行動という夫婦関係と夫婦の出生力について:

夫の育児参加が少ないことは、男女とも現実的に第3子を出産しようとする意欲を低下させることがわかったが、育児分担以上に強い効果がみられたのが、配偶者からの情緒的サポートであった。また、夫婦の伴侶性をみると、夫婦共通に行う行動が多いことや夫婦共通の趣味があることは、おおむね追加出産意欲を高めていた。

2)家族規範や家族主義と夫婦の出生力の関係について:

本調査でえられた妊娠先行型結婚の夫婦の典型的イメージは、20歳代の働く男女が2~4年交際した後に妊娠先行で結婚するというものであり、妊娠先行型結婚の夫婦は、追加出産意欲も高い。また、家族規範意識が強い者ほど、第1子および第2子の出産意欲が高いという結果がえられたが、第3子の出産意欲は、家族規範意識が強いことでは高まるものではなかった。さらに、親(子どもからみた祖父母)と同居または近居している場合に、現在・予定・理想のいずれの子ども数も多いことがわかった。

3)子育てや教育の経済的負担が夫婦の出生力に与える効果について:

年収が低い層では、直接の子育て費用が子ども数を抑制する一方で、年収が中程度の層では、子どもの大学進学期待や留学期待が子ども数を抑制することが見出された。

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夫婦の出生力の低下要因に関する分析 ~「少子化と夫婦の生活環境に関する意識調査」の個票を用いて~別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.7 MB)

全文の構成

  1. 2ページ
    【要旨】
  2. 5ページ
    目次
  3. 7ページ
    第1 部 「少子化と夫婦の生活環境に関する意識調査」について
    1. 7ページ
      1.調査の趣旨
    2. 8ページ
      2.調査について
      1. 8ページ
        2-1 調査方法
      2. 8ページ
        2-2 回答状況
    3. 11ページ
      3.主な調査結果について
    4. 16ページ
      別表
  4. 41ページ
    第2部 個票データによる分析
    1. 42ページ
      第1章 夫の育児参加と夫婦の第2子、第3子の出生意欲-理想と現実的出生意欲の比較
      1. 42ページ
        1.問題意識
      2. 44ページ
        2.仮説と分析方法
        1. 44ページ
          2-1 仮説
        2. 45ページ
          2-2 分析方法と変数
      3. 49ページ
        3.推計結果
        1. 49ページ
          3-1 第2子の出生意欲
        2. 51ページ
          3-2 第3子の出生意欲
        3. 53ページ
          3-3 小括
      4. 55ページ
        4.結論と今後の課題
    2. 60ページ
      第2章 夫婦の伴侶性と家族規範意識が追加出産意欲に及ぼす影響
      1. 60ページ
        1.問題意識
      2. 61ページ
        2.サンプルと変数
      3. 61ページ
        3.夫婦の伴侶性、共通趣味、家族規範意識
      4. 63ページ
        4.追加出産意欲
      5. 64ページ
        5.多変量解析
      6. 69ページ
        6.インプリケーション
    3. 72ページ
      第3章 世代間関係と子世代の出生数との関連
      1. 72ページ
        1.問題意識
      2. 73ページ
        2.サンプルと変数
      3. 74ページ
        3.世代間関係、子どもをめぐる規範意識
      4. 76ページ
        4.子ども数
      5. 78ページ
        5.多変量解析
      6. 80ページ
        6.インプリケーション
    4. 83ページ
      第4章 妊娠型先行結婚と通常結婚の背景と出生意欲
      1. 83ページ
        1.問題意識
      2. 84ページ
        2.通常結婚と妊娠先行型結婚における結婚時の状況
      3. 87ページ
        3.通常結婚と妊娠型先行結婚経験者の現在の状況
      4. 90ページ
        4.考察とまとめ
    5. 92ページ
      第5章 教育アスピレーションが出生力に及ぼす影響
      1. 92ページ
        1.問題意識
        1. 92ページ
          1-1 少子化と夫婦出生力の低下
        2. 92ページ
          1-2 お金の問題
        3. 93ページ
          1-3 出生力低下の指標について
      2. 94ページ
        2.分析の視点
        1. 94ページ
          2-1 夫婦の分類について
        2. 94ページ
          2-2 本調査における夫婦の出生力の概要
      3. 96ページ
        3.子育ての経済的負担
        1. 96ページ
          3-1 教育費負担と経済階層
        2. 98ページ
          3-2 教育アスピレーション
        3. 99ページ
          3-3 教育アスピレーションと出生力
      4. 101ページ
        4.インプリケーション
    6. 103ページ
      第6章 本研究でえられた知見
  5. 105ページ
    参考資料
    1. 105ページ
      単純集計表
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)